うつ病、双極性障害、統合失調症、発達障害などの精神疾患があり、障害年金を受給している方の中には、「少し働きたいけれど、働いたら年金が止まるのではないか」と不安に感じる方もいるかもしれません。
障害年金は、働き始めたからといって直ちに支給が止まる制度ではありません。ただし、精神障害の場合は、就労状況や日常生活の様子、職場で受けている配慮、診断書の内容などが総合的に確認されます。
この記事では、精神障害で障害年金を受けている方が働きながら受給できるのか、収入や所得制限、更新時に注意したいポイントをわかりやすく解説します。
障害年金は働きながら受給できるのか
障害年金は、「働いているかどうか」だけで支給の可否が決まるものではありません。病気や障害によって、日常生活や労働にどの程度の制限があるかが重要になります。
受給要件に「働いていないこと」は含まれていない
障害年金の受給要件には、「働いていないこと」という条件はありません。
審査で確認されるのは、病気や障害の状態、日常生活での困難さ、労働にどの程度の制限があるかなどです。精神障害の場合も、短時間勤務や配慮のある職場で働いている方が、障害年金を受給しているケースがあります。
ただし、働けている事実は、障害の状態を判断する材料の一つになります。勤務時間、仕事内容、職場で受けている配慮、仕事後の疲労感、家事や通院への影響などを含めて、総合的に判断されます。
働いているだけで直ちに支給停止になるわけではない
精神障害の認定では、就労していることだけをもって、すぐに日常生活能力が高くなったと判断されるわけではありません。
たとえば、次のような働き方をしている場合は、配慮や制限のある就労として考えられることがあります。
- 短時間勤務で働いている
- 週に数回だけ勤務している
- 体調不良時に休める配慮を受けている
- 就労継続支援A型・B型などを利用している
- 障害者雇用枠で仕事内容や勤務時間の調整を受けている
大切なのは、「働いているかどうか」だけではなく、「どのような配慮があって働けているのか」「日常生活にはどのような支障が残っているのか」を正確に整理しておくことです。
働くと障害年金に影響する可能性があるケース
働き始めても直ちに障害年金が止まるわけではありませんが、就労状況によっては、更新時の判断材料になる場合があります。
障害の状態が軽くなったと判断される場合
一般雇用でフルタイム勤務ができている、職場で特別な配慮を受けずに安定して働けている、残業にも対応できているなどの場合は、障害の状態が以前より軽くなったと判断される可能性があります。
ただし、これも個別判断です。勤務できているように見えても、実際には体調不良で欠勤が多い、仕事後に寝込んでしまう、家事や通院に大きな支障が出ているといった事情がある場合もあります。
無理をして働いている場合は、その実態を主治医に正確に伝えることが大切です。
日常生活への支障が少ないと判断される場合
精神障害の障害年金では、働く力だけでなく、日常生活の状況も確認されます。
たとえば、仕事、家事、金銭管理、対人関係、通院、服薬管理などを安定して行えていると判断されると、障害の程度が軽いと見られる可能性があります。
一方で、仕事には何とか行けていても、帰宅後は疲れ切って食事や入浴が難しい、休日は寝込んでしまう、家族の支援がないと生活が整わないといった場合は、日常生活上の困難さとして整理しておく必要があります。
就労継続支援を利用しながら障害年金を受ける場合
就労継続支援A型・B型を利用している場合でも、それだけで直ちに障害年金が支給停止になるとは限りません。
就労継続支援は、一般企業での就労が難しい方が、支援を受けながら働くための福祉サービスです。そのため、給与や工賃の金額だけでなく、支援を受けながら働いている実態も確認されます。
A型の給与だけで直ちに支給停止になるわけではない
就労継続支援A型では、原則として雇用契約を結び、給与を受け取りながら働きます。
A型で給与を得ている場合でも、それだけで直ちに障害年金が止まるわけではありません。勤務時間、仕事内容、通所日数、職員から受けている支援、体調不良時の対応などを含めて、実際の働き方が確認されることがあります。
短時間の利用や体調に合わせた通所など、配慮を受けながら働いている場合は、その内容を整理しておくとよいでしょう。
B型の工賃だけで直ちに支給停止になる可能性は高くない
就労継続支援B型では、雇用契約を結ばず、作業に応じた工賃を受け取る形が一般的です。
B型で工賃を受け取っていることだけで、直ちに障害年金が止まる可能性は高くありません。ただし、通所頻度、作業内容、作業時間、支援の必要性などは、障害の状態を判断する材料になる場合があります。
工賃額だけでなく、どのような支援を受けながら作業しているのか、体調に波がある中でどの程度取り組めているのかを記録しておくと安心です。
障害年金を働きながら受給する際の所得制限
障害年金には、収入や所得による制限があるケースと、原則として所得制限がないケースがあります。自分が受けている年金の種類によって扱いが異なるため、注意が必要です。
障害厚生年金には原則として所得制限はない
障害厚生年金には、原則として収入額そのものによる所得制限はありません。
そのため、働いて収入を得たからといって、収入額だけを理由に障害厚生年金が支給停止になるわけではありません。
ただし、就労状況から障害の状態が軽くなったと判断されると、更新時に等級変更や支給停止となる可能性はあります。収入の有無だけでなく、働き方や日常生活の状況を正確に伝えることが大切です。
20歳前傷病による障害基礎年金には所得制限がある
20歳前に初診日がある障害基礎年金には、所得制限があります。
前年の本人所得が一定額を超えると、年金の一部または全部が支給停止となる場合があります。所得制限の基準は扶養親族の有無などによって変わるため、最新の情報を日本年金機構などで確認することが大切です。
ここで確認されるのは、単純な手取り額ではなく、税法上の「所得」です。給与収入の場合は、給与収入から給与所得控除などを差し引いた金額が目安になります。
働き始める前に確認しておきたいこと
障害年金を受けながら働く場合は、年金だけでなく、勤務条件や社会保険の加入条件も確認しておくと安心です。
就職後すぐに年金事務所への報告が必要とは限らない
働き始めたからといって、必ずしもすぐに年金事務所へ報告しなければならないとは限りません。
障害年金では、更新時に障害状態確認届の診断書などを通じて、現在の障害の状態や就労状況が確認されます。
ただし、年金の種類や状況によって扱いが異なる場合があります。不安がある場合や収入が大きく変わる場合は、年金事務所、社会保険労務士、自治体の窓口などに確認しておくと安心です。
社会保険の加入条件を確認する
パートやアルバイトで働く場合は、職場の社会保険に加入するかどうかも確認しておきましょう。
短時間労働者の場合、主に次のような条件が関係します。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
- 2か月を超える雇用の見込みがあること
- 学生ではないこと
- 勤務先が一定規模以上の事業所であること
社会保険に加入したからといって、直ちに障害年金が止まるわけではありません。ただし、勤務時間や収入が増える場合は、年金の更新時に就労状況として確認される可能性があります。
勤務時間・収入・体調の変化を記録しておく
働き始めたら、勤務時間、収入、欠勤日、体調の変化などを記録しておくことをおすすめします。
シフト表、給与明細、通院日、体調不良で休んだ日、仕事後に生活へ影響が出た日などを残しておくと、更新時や医師へ説明するときに役立ちます。
特に精神障害の場合、診察室では普段の生活の困りごとが伝わりにくいことがあります。日々の記録をもとに、無理をして働いている実態や、配慮があって働けている状況を整理しておきましょう。
更新時に注意したいポイント
障害年金の更新時には、障害状態確認届の診断書を医師に記載してもらい、期限までに提出します。働いている場合は、仕事の状況や日常生活への影響を主治医に正確に伝えることが大切です。
職場で受けている配慮を主治医に伝える
診断書を作成してもらう前に、職場で受けている配慮を主治医に伝えておきましょう。
たとえば、次のような内容です。
- 短時間勤務にしてもらっている
- 体調不良時に休めるよう配慮されている
- 作業量を調整してもらっている
- 対人対応が少ない業務にしてもらっている
- 支援員や上司に相談しながら働いている
配慮があることで働けている場合、その内容は重要な情報です。口頭で説明しにくい場合は、メモにまとめて主治医へ渡す方法もあります。
日常生活で困っていることも整理しておく
働いている事実だけを見ると、元気に生活できているように見えてしまうことがあります。
しかし実際には、仕事後に疲れ切って家事ができない、休日は寝込んでしまう、服薬や通院を続けながら何とか働いているという方もいます。
更新時には、仕事の状況だけでなく、食事、入浴、掃除、買い物、金銭管理、対人関係、通院など、日常生活で困っていることも整理しておきましょう。
支給停止や等級変更に納得できない場合は期限内に相談する
更新の結果、支給停止や等級変更となり、その決定に納得できない場合は、審査請求という不服申立ての手続きがあります。
審査請求には期限があり、決定があったことを知った日の翌日から原則3か月以内に行う必要があります。
期限を過ぎると対応が難しくなる場合があるため、通知を受け取ったら早めに年金事務所、社会保険労務士、自治体窓口などへ相談しましょう。
障害年金を受けながら無理なく働くためのポイント
障害年金を受けながら働く場合は、収入を増やすことだけでなく、体調を崩さずに働き続けられるかどうかも大切です。
短時間勤務から始める
働くことに不安がある場合は、いきなり長時間勤務を目指すのではなく、短時間勤務から始める方法があります。
たとえば、週に数回、1日数時間から始めて、体調や生活リズムを見ながら少しずつ調整していくと、負担を抑えやすくなります。
無理に勤務時間を増やすと、体調を崩して働き続けることが難しくなる場合もあります。主治医や支援者と相談しながら、自分に合った働き方を考えましょう。
体調不良時に休める職場を選ぶ
精神障害がある場合、日によって体調に波が出ることがあります。
そのため、体調不良時に休みやすいか、勤務時間を調整できるか、通院日への配慮があるかなどは、職場選びで確認しておきたいポイントです。
無理をして働き続けるよりも、体調に合わせて働ける環境を選ぶことが、長く働くうえで大切です。
障害への配慮を受けられる環境を検討する
一般のアルバイトやパートだけでなく、障害者雇用、就労継続支援A型・B型、就労移行支援などを利用する選択肢もあります。
障害への理解や支援がある環境では、仕事内容や勤務時間を相談しながら働きやすくなる場合があります。
どの働き方が合っているかは、体調、希望する収入、通院状況、生活リズムなどによって異なります。必要に応じて、主治医、相談支援専門員、ハローワーク、自治体窓口などに相談してみましょう。
まとめ|障害年金は働きながら受給できる場合がある
障害年金は、働き始めたからといって直ちに支給停止になる制度ではありません。精神障害の場合も、働き方、職場で受けている配慮、日常生活の困難さ、診断書の内容などをもとに総合的に判断されます。
一方で、就労状況によっては更新時の判断材料になることがあります。特に、フルタイム勤務が安定してできている場合や、日常生活への支障が少ないと判断される場合は、等級変更や支給停止につながる可能性もあります。
働きながら障害年金を受ける場合は、収入や勤務時間だけでなく、体調の変化、職場での配慮、日常生活で困っていることを記録しておくことが大切です。判断に迷う場合は、年金事務所や専門家に確認しながら、自分の状態に合った働き方を検討しましょう。
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