病気や障がいなどによる長期のブランクがあり、主治医や支援者から仕事について考えてもよいと言われても、「本当に続けられるだろうか」「また体調を崩さないだろうか」と不安になることがあります。
働くことへの不安があるからといって、すぐにフルタイムの一般就労を目指さなければならないわけではありません。一般就労、障害者雇用、就労移行支援、就労継続支援A型・B型など、現在の状態に合わせて複数の選択肢を検討できます。
この記事では、長期ブランク後に感じやすい不安、就労継続支援A型の特徴、他の就労支援との違い、利用を検討する際の注意点を解説します。
長期ブランク後に働くのが怖いと感じるのは珍しいことではない
長く仕事から離れていると、以前と同じように働けるか分からず、不安を感じることがあります。これは本人の意欲や性格だけの問題ではありません。
生活リズム、体力、集中力、仕事の進め方、人との関わり方など、仕事を続けるために確認したいことが多いため、慎重になるのは自然な反応といえます。
周囲から取り残されたように感じることがある
ブランクが長くなると、元同僚や友人の仕事に関する話を見聞きして、「自分だけが止まっている」と感じることがあります。
しかし、療養や生活の立て直しに使った期間は、単純に無駄な時間とはいえません。周囲と比べるよりも、現在の体調や生活状況を基準に、どの程度の働き方なら続けられそうかを考えることが大切です。
医師の判断と本人の心の準備は同じとは限らない
主治医から仕事について考えてもよいと言われても、すぐに不安がなくなるとは限りません。
たとえば、次のような心配が考えられます。
- 再び体調を崩さないか
- ブランクを面接でどのように説明すればよいか
- 決められた時間に継続して通えるか
- 仕事のスピードについていけるか
- 職場の人間関係に対応できるか
就労可能かどうかは、病状だけでなく、生活リズム、通勤負担、勤務時間、仕事内容、必要な配慮などを含めて考える必要があります。主治医や支援者と相談しながら、段階的に準備する方法もあります。
いきなり一般企業へ戻ることだけが選択肢ではない
一般企業への就職が、長期ブランクのある人にとって必ず危険というわけではありません。一般企業にも、障害者雇用、短時間勤務、業務量の調整など、必要な配慮を相談できる職場があります。
障害者雇用促進法では、事業主に対して、過重な負担にならない範囲で障がいの特性に応じた合理的配慮を提供することが求められています。合理的配慮とは、勤務時間、休憩、業務内容、作業環境などについて、本人と事業主が話し合い、仕事を進めやすくするための調整を行うことです。
一方で、現在の体調や生活状況に対して勤務時間や業務量が合っていない場合は、負担が大きくなる可能性があります。一般就労だけに絞らず、複数の選択肢を比較することが重要です。
仕事のスピードや通勤が負担になる場合がある
ブランク明けには、決められた時間に起きること、通勤すること、一定時間集中することだけでも疲れを感じる場合があります。
仕事内容に対応できても、通勤時間や勤務日数が体調に合わないこともあります。仕事内容だけでなく、勤務時間、休憩の取り方、通勤方法なども確認しましょう。
必要な配慮を整理しておくことが大切
職場へ配慮を相談するためには、自分がどのような場面で困りやすいかを整理しておくことが役立ちます。
- 長時間の勤務が続くと疲れやすい
- 一度に複数の指示を受けると混乱しやすい
- 静かな場所のほうが集中しやすい
- 定期的な通院が必要である
- 体調の変化を相談できる担当者が必要である
本人だけで整理するのが難しい場合は、相談支援専門員、障害者就業・生活支援センター、ハローワークの専門窓口などに相談できます。
就労継続支援A型とは
就労継続支援A型は、一般企業等で働くことが難しく、適切な支援があれば雇用契約に基づいて継続的に働ける人を対象とした障害福祉サービスです。
利用者はA型事業所と雇用契約を結び、仕事をしながら、就労に必要な知識や能力を身につけるための支援を受けます。
雇用契約に基づいて給与が支払われる
A型では、事業所と雇用契約を結ぶため、労働関係法令が適用されます。給与には原則として地域別最低賃金が適用されます。
ただし、最低賃金額は都道府県によって異なります。また、都道府県労働局長から個別の許可を受けた場合には、最低賃金の減額特例が適用されることがあります。求人票や労働条件通知書で、時給や勤務条件を確認することが大切です。
有給休暇や社会保険には加入要件がある
A型の利用者も雇用される労働者であるため、条件を満たせば年次有給休暇が付与され、雇用保険、健康保険、厚生年金などの対象になります。
ただし、すべての利用者が利用開始と同時に対象になるわけではありません。
- 年次有給休暇は、原則として一定期間の継続勤務と出勤率の要件がある
- 雇用保険は、週の所定労働時間や雇用見込みなどの要件がある
- 健康保険と厚生年金は、勤務時間、賃金、雇用見込み、勤務先の規模などで判断される
加入状況は、求人票や事業所への確認だけでなく、労働条件通知書でも確認しましょう。
A型を利用できる人
A型の主な対象は、一般企業等への就職が難しく、支援があれば雇用契約に基づいて継続的に働ける人です。
具体的には、次のような人が対象となる場合があります。
- 就労移行支援を利用したものの、一般企業等への就職に結びつかなかった人
- 特別支援学校卒業後の就職活動で、一般企業等への就職に結びつかなかった人
- 就労経験があるものの、現在は雇用されていない人
原則として18歳以上65歳未満が対象ですが、一定の要件を満たしている場合は65歳以降も継続利用できることがあります。
障害者手帳の有無だけで利用の可否が決まるわけではありません。医師の診断書や意見書などで対象となる場合もありますが、必要書類や判断方法は自治体によって異なります。
最終的には、市区町村による障害福祉サービスの支給決定と、A型事業所による採用判断が必要です。
就労移行支援・B型事業所との違い
A型以外にも、就労移行支援や就労継続支援B型があります。それぞれ目的や雇用契約の有無が異なります。
就労移行支援は一般就労を目指すための支援
就労移行支援は、一般企業等への就職を希望する人に対して、就職に必要な知識や能力を身につけるための訓練、職場体験、応募書類の作成、面接対策、就職後の定着支援などを行うサービスです。
事業所との雇用契約は結ばないため、原則として給与は発生しません。作業を行った場合に工賃が支払われる事業所もありますが、対応は事業所によって異なります。
一般就労を目標として、就職活動までの準備を進めたい人に適している場合があります。
B型は雇用契約を結ばずに生産活動へ参加するサービス
就労継続支援B型は、雇用契約に基づいて働くことが難しい人に対して、生産活動などの機会と、就労に必要な知識や能力の向上・維持に向けた支援を提供する障害福祉サービスです。
B型では雇用契約を結ばないため、給与ではなく工賃が支払われます。厚生労働省が公表している直近の全国平均工賃月額は24,141円ですが、実際の金額は地域、事業所、作業内容、利用日数などによって大きく異なります。
利用日数や作業時間を柔軟に相談できる事業所もありますが、利用条件は事業所や支給決定の内容によって異なります。
A型は雇用契約に基づく継続勤務が可能かどうかがポイント
A型は、支援を受けながらでも、決められた勤務日や勤務時間に継続して働けることが前提となります。
「働くことが怖い」という理由だけでA型が適しているとは限りません。現在の生活リズム、通勤の可否、勤務可能な時間、体調の安定度などを確認し、就労移行支援やB型も含めて検討する必要があります。
長期ブランクのある人がA型を選択肢にできる理由
支援と雇用の両方がある
A型では、雇用契約に基づいて仕事をしながら、支援員へ体調や仕事上の困りごとを相談できます。
ただし、支援内容や相談体制は事業所によって異なります。見学や面接の際には、どのような支援を受けられるかを具体的に確認しましょう。
短時間勤務の求人が見つかる場合がある
A型事業所の勤務時間は一律ではありません。短時間勤務を設定している事業所もあれば、週の勤務日数や時間があらかじめ決まっている事業所もあります。
「最初は週数日だけ働きたい」「午前中からの勤務は難しい」といった希望が、必ず認められるわけではありません。求人条件と本人の希望が合っているかを確認することが必要です。
給与を受け取りながら仕事の経験を積める
A型では、実際の仕事を通じて、決められた時間に出勤すること、業務を報告すること、周囲と連携することなどを経験できます。
こうした経験が、働き方を見直したり、将来の一般就労を検討したりする際の材料になることがあります。
仕事内容を比較して選べる
A型事業所の仕事内容は、事業所によって異なります。
- データ入力や書類整理などの事務作業
- 商品の梱包や仕分けなどの軽作業
- 清掃や施設管理
- 調理補助や販売補助
- デザイン、動画編集、文章作成
- 農作業や園芸作業
同じ事務作業でも、電話対応がある事業所とない事業所があります。仕事内容の名称だけで判断せず、実際の作業手順、作業量、求められるスピードまで確認しましょう。
在宅利用に対応している場合がある
在宅での作業や支援に対応しているA型事業所もあります。
ただし、在宅利用は、体調が悪い日に自由に通所から切り替えられる制度ではありません。在宅利用による支援効果を市区町村が認めることや、事業所が所定の支援体制を整えていることなどが必要です。
在宅勤務を希望する場合は、求人上の雇用条件だけでなく、障害福祉サービスとして在宅利用が認められるかも確認しましょう。
A型事業所を利用するまでの一般的な流れ
A型の利用には、障害福祉サービスの手続きと、事業所の採用手続きの両方が関係します。手続きの順番は自治体や事業所によって異なる場合があります。
1.市区町村や支援機関へ相談する
まずは、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口、相談支援事業所、ハローワークの専門窓口などへ相談します。
現在の体調、働ける時間、希望する仕事内容、通勤できる範囲などを伝え、A型以外の選択肢も含めて整理してもらいましょう。
2.求人や事業所の情報を集める
ハローワーク、自治体の事業所一覧、障害福祉サービス等情報公表システムなどを使い、通える範囲の事業所を探します。
事業所によって仕事内容、勤務時間、給与、支援体制が異なるため、複数の候補を比較することが大切です。
3.見学や応募を行う
見学や作業体験を設けている事業所もありますが、すべての事業所で実施しているわけではありません。
A型は雇用契約を結ぶサービスであるため、一般的には応募書類の提出や面接などの採用選考があります。障害福祉サービスの対象であっても、希望する事業所へ必ず採用されるわけではありません。
4.障害福祉サービスの申請を行う
A型の利用には、障害福祉サービス受給者証が必要です。受給者証とは、市区町村が障害福祉サービスの利用を認め、利用できるサービスの種類や期間などを記載したものです。
申請では、サービス等利用計画案、障害者手帳、診断書、医師の意見書などを求められる場合があります。必要書類は自治体や本人の状況によって異なります。
A型では、サービスが本人に適しているか確認するため、一定期間の暫定支給決定が行われる場合があります。また、自治体から就労選択支援を案内されることもあります。
申請から支給決定までの期間は一律ではないため、市区町村の窓口へ確認してください。
5.契約後に利用を開始する
採用と支給決定が整ったら、事業所と雇用契約や障害福祉サービスの利用契約を結びます。
契約前には、給与、勤務時間、休日、業務内容、試用期間、社会保険、支援内容、利用者負担などを確認しましょう。
A型事業所を選ぶ際の確認ポイント
仕事内容と労働条件
- 実際に担当する仕事は何か
- 求められる作業スピードはどの程度か
- 勤務日数と勤務時間は希望に合うか
- 給与の金額と締め日・支払日はどうなっているか
- 休憩時間や休日はどうなっているか
- 社会保険や雇用保険の加入条件を満たすか
相談しやすい支援体制があるか
- 体調の変化を誰に相談すればよいか
- 定期面談は行われるか
- 業務内容や作業量の調整を相談できるか
- 個別支援計画について説明があるか
- 困ったときの連絡方法が決まっているか
事業所の雰囲気だけで決めない
見学時の雰囲気は大切ですが、それだけで判断するのは避けましょう。
求人票、労働条件通知書、重要事項説明書などの書類を確認し、説明と実際の条件に違いがないかを見ることが重要です。
利用者負担の有無を確認する
A型は障害福祉サービスでもあるため、所得等に応じてサービスの利用者負担が生じる場合があります。
月額の負担上限は所得区分によって決まり、負担がない人もいます。自分に利用者負担があるかどうかは、市区町村や事業所へ確認してください。
A型以外の選択肢も比較する
長期ブランクがある場合でも、A型だけが選択肢ではありません。
- 障害者雇用:一般企業と雇用契約を結び、必要な合理的配慮を相談しながら働く
- 就労移行支援:一般就労に向けた訓練や就職活動の支援を受ける
- 就労継続支援B型:雇用契約を結ばず、生産活動に参加しながら働くための準備を進める
- 地域障害者職業センター:職業評価や職場復帰に向けた支援について相談する
- 障害者就業・生活支援センター:仕事と生活の両面について相談する
どの支援が合うかは、診断名やブランクの長さだけでは決まりません。現在の体調、生活リズム、働ける時間、希望する収入、将来の目標などを総合的に考える必要があります。
まとめ|A型が自分に合うかを支援者と一緒に整理しよう
長期ブランクの後に働き始めることが怖いと感じても、すぐにフルタイムの一般就労を目指す必要はありません。
就労継続支援A型は、一般企業等への就職が難しく、支援があれば雇用契約に基づいて継続的に働ける人にとって、選択肢の一つになります。給与を受け取りながら仕事の経験を積める一方で、決められた勤務条件に継続して対応することや、採用選考と市区町村の支給決定を受けることが必要です。
A型が合うか分からない場合は、市区町村の障害福祉担当窓口、相談支援専門員、ハローワーク、障害者就業・生活支援センターなどへ相談し、一般就労、障害者雇用、就労移行支援、B型も含めて比較してみましょう。
周囲と同じ速さで進むことよりも、現在の状態に合い、無理なく継続できる働き方を選ぶことが大切です。
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