「体調は落ち着いてきたものの、フルタイムで働くことには不安がある」「再び体調を崩さずに続けられる仕事を探したい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
精神障害があっても、体調や得意・不得意に合った働き方を検討することは可能です。ただし、働き始める時期や適した勤務時間、必要な配慮は、一人ひとり異なります。
本記事では、精神障害があり働きたいと考えている方に向けて、生活面の準備から雇用形態の選び方、職場環境、面接、支援機関の利用までを7つのステップで解説します。
就労を急ぐのではなく、必要に応じて主治医や支援者と相談しながら、自分に合う進め方を考えていきましょう。
精神障害がある方が仕事で感じる負担は人によって異なる
精神障害による仕事上の負担は、診断名だけで決まるものではありません。現在の症状、服薬状況、生活環境、仕事内容、職場の人間関係などによって異なります。
人によっては、次のような負担を感じることがあります。
- 長時間の作業で疲れやすい
- 集中力や意欲に波がある
- 急な予定変更に負担を感じる
- 大きな音や人の多い環境で疲れやすい
- 複数の指示を同時に受けると整理しにくい
- 周囲に体調や症状を理解してもらいにくい
一方で、これらがすべての方に当てはまるわけではありません。マルチタスクが得意な方や、人と関わる仕事にやりがいを感じる方もいます。
「精神障害がある人に向いている仕事」を一律に探すのではなく、自分が負担を感じる状況と、力を発揮しやすい条件を整理することが大切です。
ステップ1.現在の体調と就労準備の状況を確認する
最初に、現在の体調でどの程度の活動ができるかを確認します。働きたいという気持ちがあっても、体調が安定していない時期に無理をすると、症状が強くなったり、生活リズムが崩れたりする可能性があります。
次のような点を振り返ってみましょう。
- 起床時間や就寝時間が大きく乱れていないか
- 日中に一定時間起きて過ごせるか
- 外出した翌日に強い疲れが残らないか
- 読書やパソコン作業に一定時間取り組めるか
- 通院や服薬を無理なく継続できているか
- 不調の兆候に自分で気づけるか
すべてができていなければ働けない、ということではありません。現在できていることと、負担になっていることを確認するための目安です。
就労を始める時期に迷う場合は、主治医や医療機関の相談員、就労支援機関などに相談しましょう。休職中の方は、勤務先の復職制度や産業医との面談についても確認が必要です。
ステップ2.生活リズムと日中の活動を少しずつ整える
離職期間や休職期間が長い場合は、すぐに求人へ応募するのではなく、生活リズムを整えることから始める方法があります。
起床時間をできる範囲でそろえる
毎日同じ時間に起きることが難しい場合は、まず起床時間の幅を少しずつ小さくしていきます。
例えば、「午前中には起きる」「起きたらカーテンを開ける」「朝食を取る」など、取り組みやすい目標から始めます。睡眠の問題が続いている場合は、自己判断で無理に睡眠時間を変えず、主治医に相談してください。
日中の活動量を徐々に増やす
体調が安定してきたら、無理のない範囲で日中の活動を増やします。
- 近所を短時間散歩する
- 簡単な家事に取り組む
- 図書館や買い物など決まった目的で外出する
- パソコン作業や読書を短時間行う
大切なのは、活動した時間だけでなく、その日の夜や翌日の体調も確認することです。活動後に強い疲れが続く場合は、時間や頻度を減らして調整しましょう。
ステップ3.得意なことと負担になりやすいことを整理する
自分に合う仕事を探すためには、職種名だけでなく、具体的な作業や環境について整理することが大切です。
取り組みやすい作業を書き出す
これまでの仕事、学校生活、家事、趣味などを振り返り、比較的取り組みやすかった作業を書き出してみましょう。
- 決められた手順に沿って進める作業
- 文章を入力したり資料を作成したりする作業
- 物を分類、整理、確認する作業
- 人に説明したり案内したりする作業
- 体を動かす作業
- 一人で集中して進める作業
- 周囲と相談しながら進める作業
データ入力や軽作業であっても、作業速度や処理件数が求められる職場はあります。職種名だけで判断せず、実際の業務量、期限、電話対応の有無、周囲との連携方法などを確認しましょう。
不調の兆候と対処方法を整理する
長く働くためには、不調が強くなる前の変化に気づくことも重要です。
例えば、次のような変化がないか振り返ります。
- 眠りにくくなる
- 食欲が変化する
- 遅刻や欠席が増える
- 考えがまとまりにくくなる
- 人との会話を避けたくなる
- ミスが増える
不調の兆候が出た際に、「早めに支援者へ相談する」「休憩を取る」「予定を減らす」など、自分に合う対応方法を決めておくと、働き始めた後の体調管理にも役立ちます。
ステップ4.障害者雇用と一般雇用の違いを理解する
企業で働く方法には、障害者向け求人に応募する方法と、一般求人に応募する方法があります。どちらが適しているかは、希望する仕事、必要な配慮、障害を企業に伝えるかどうかなどによって異なります。
障害者雇用の特徴
障害者雇用では、企業に障害があることを伝えたうえで、必要な配慮について相談しながら働くことが基本となります。
配慮の例としては、次のようなものがあります。
- 通院日に休暇や早退について相談する
- 業務の優先順位を明確にしてもらう
- 口頭だけでなく、メモやメールでも指示を受ける
- 業務量や勤務時間について段階的な調整を相談する
- 相談担当者を決めてもらう
ただし、希望した配慮がすべて認められるとは限りません。本人と企業が話し合い、業務内容や企業側の負担なども踏まえて決められます。
また、応募条件として障害者手帳の確認を求められる求人もあります。応募前に求人票やハローワークなどで条件を確認しましょう。
一般雇用の特徴
一般雇用は求人数や職種の選択肢が多い一方、勤務時間、業務量、必要な能力などは求人によって大きく異なります。
一般求人に応募する場合でも、障害を企業に伝えて必要な配慮を相談する方法があります。一方、障害を伝えずに働く方法を選ぶ方もいます。
障害を伝えて働く方法は「オープン就労」、伝えずに働く方法は「クローズ就労」と呼ばれることがあります。
クローズ就労では、障害に関する情報を伝えずに応募できますが、企業が障害や必要な配慮を把握できないため、個別の配慮を相談しにくくなる場合があります。
障害をどこまで伝えるか迷う場合は、ハローワークや就労支援機関などで相談し、メリットと注意点を整理してから決めるとよいでしょう。
ステップ5.自分に合う職場環境と配慮を考える
自分に合う職場を探す際は、職種だけでなく、働く環境や仕事の進め方を確認します。
確認したい職場環境
- 勤務時間や勤務日数を相談できるか
- 休憩を取りやすいか
- 仕事内容や優先順位が明確か
- 急な予定変更がどの程度あるか
- 電話対応や来客対応があるか
- 一人で進める仕事と共同作業の割合
- 相談できる上司や担当者がいるか
- 通院と仕事を両立しやすいか
- 通勤時間や混雑が負担にならないか
負担になりやすい環境を把握する
人によっては、次のような環境が負担になる場合があります。
- 指示や役割が頻繁に変わる
- 複数の業務が繰り返し割り込んでくる
- 常に高い処理件数や売上目標を求められる
- 大きな音や人の出入りが多い
- 休憩や相談を申し出にくい
- 残業や勤務時間の変更が多い
一方で、変化のある仕事や人との関わりが多い仕事を得意とする方もいます。一般的な適職情報だけで判断せず、職場見学や実習が利用できる場合は、実際の環境を確認することが大切です。
ステップ6.面接で伝える内容を準備する
障害者雇用や、障害を開示して一般求人に応募する場合は、面接で伝える内容を事前に整理しておきます。
診断名や症状をすべて詳しく話す必要があるとは限りません。仕事をするうえで影響することと、必要な配慮を中心に、伝えられる範囲で説明します。
仕事に影響する特性
「疲れやすいです」とだけ伝えるのではなく、仕事との関係が分かるように説明します。
- 長時間集中すると疲れやすいため、定期的な小休止について相談したい
- 複数の口頭指示を同時に受けると整理しにくいため、優先順位を確認したい
- 大きな音が続く環境では集中しにくい
自分で行っている対処
企業に求める配慮だけでなく、自分で行っている対処も伝えます。
- 指示を受けたらメモを取る
- 分からない点を早めに確認する
- 体調の変化を記録する
- 不調の兆候が出たら早めに相談する
希望する配慮
配慮は、具体的かつ業務との関係が分かるように伝えます。
- 指示を一つずつ伝えてほしい
- 業務の優先順位を明確にしてほしい
- 通院日について勤務時間を相談したい
- 体調が変化したときに相談する担当者を決めてほしい
配慮内容は一方的に決めるものではありません。企業と相談し、実際の仕事内容や職場環境に合わせて調整します。
ステップ7.支援機関を利用しながら就職活動を進める
一人で就職活動を進めることに不安がある場合は、就労支援機関を利用できます。利用できる支援や対象者は機関によって異なるため、事前に確認しましょう。
ハローワークの障害者向け専門窓口
ハローワークには、障害のある方の就職について相談できる専門窓口があります。
障害者向け求人や一般求人の紹介のほか、応募書類、面接、職場への配慮の伝え方などを相談できます。障害者手帳を持っていない方でも相談できる場合がありますが、状況によって診断書や医師の意見書などの確認を求められることがあります。
就労移行支援事業所
就労移行支援は、一般企業などへの就労を希望し、就労に必要な知識や能力を身につけるための支援が必要な方を対象とした障害福祉サービスです。
支援内容の例には、次のようなものがあります。
- 生活リズムや体調管理に関する支援
- パソコン操作や作業訓練
- 応募書類の作成や面接練習
- 企業見学や職場実習
- 就職活動の支援
- 就職後の職場定着に向けた支援
利用には自治体への申請や支給決定が必要です。対象要件、利用期間、通所日数、プログラムは、本人の状況や自治体、事業所によって異なります。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは、障害のある方を対象に、職業相談や職業評価、職業準備支援、ジョブコーチによる支援などを行っています。
面談や作業状況の確認などを通して、得意なこと、負担になりやすいこと、必要な配慮を整理できる場合があります。実際に受けられる支援は、本人の状況や地域のセンターによって異なるため、事前に問い合わせて確認しましょう。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターでは、仕事に関する相談だけでなく、生活面も含めた支援を行っています。
就職活動、職場定着、生活リズム、金銭管理、関係機関との連絡調整などについて相談できる場合があります。
まとめ|自分の体調と特性に合う方法で就労を目指そう
精神障害があり働きたいと考えている方は、すぐに求人へ応募することだけが最初の一歩ではありません。
まずは現在の体調や生活リズムを確認し、得意な作業、負担になりやすい環境、不調の兆候などを整理することが大切です。そのうえで、障害者雇用と一般雇用の違いを理解し、自分に必要な配慮や職場環境を考えます。
症状や適した働き方には個人差があります。就労の開始時期や勤務条件に迷ったときは、主治医やハローワーク、就労支援機関などに相談しながら進めましょう。
一度にすべてを整えようとせず、現在の体調に合わせて段階的に準備することが、働き続けられる環境を考えることにつながります。
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