「また仕事が続かなかった」と、自分を責めていませんか。一般就労がうまくいかない背景には、本人の努力だけではなく、障害特性と職場環境の相性、支援の有無、体調の波などが関係している場合があります。この記事では、一般就労以外の働き方、利用できる可能性がある支援制度、相談先をわかりやすく解説します。自分に合った働き方を考えるきっかけとして、無理のない一歩を見つけていきましょう。
一般就労がうまくいかなかったのは、本人だけの問題とは限らない
一般就労がうまくいかなかったとき、「自分の努力が足りなかったのかもしれない」と感じる人は少なくありません。しかし、仕事が続かない背景には、障害特性と職場環境のミスマッチが関係している場合があります。
発達障害のある方の場合、業務の進め方、指示の出され方、職場の人間関係、急な予定変更などが負担になりやすいことがあります。本人の能力が低いという意味ではなく、働く環境や支援の形が合っていないために力を発揮しにくくなることがあるのです。
「続けられない」と感じる理由は障害特性に関係する場合がある
発達障害には、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などがあり、現れ方には個人差があります。
ADHDのある方は、ケアレスミスが出やすい、締め切り管理が苦手、複数の業務を同時に進めると混乱しやすいといった困りごとを感じる場合があります。ASDのある方は、暗黙のルールを読み取ることが難しい、急な変更に強い負担を感じる、口頭だけの指示では理解しにくいといった場面があるかもしれません。
こうした困りごとは、「怠けている」「やる気がない」と単純に言えるものではありません。自分を責める前に、自分の特性と職場環境の相性を見直すことが大切です。
環境や支援の有無で働きやすさは変わる
同じ特性があっても、職場環境によって働きやすさは大きく変わります。たとえば、指示が口頭だけの職場よりも、メモやチャットで確認できる職場の方が安心して働ける人もいます。定期的な面談や相談できる担当者がいることで、困りごとを早めに共有できる場合もあります。
仕事が続かなかった経験がある場合は、「自分を変えなければ」と考えすぎるよりも、「自分に合う環境や支援は何か」を考える視点が役立ちます。
一般就労が難しいと感じたときの働き方の選択肢
一般就労がうまくいかなかったとしても、働く方法は一つではありません。障害者雇用、福祉的就労、短時間勤務、在宅ワークなど、体調や特性に合わせて検討できる選択肢があります。
障害者雇用枠での就職
障害者雇用枠とは、障害のある方を対象とした採用枠です。原則として障害者手帳を持っている方が対象となり、企業と雇用契約を結んで働きます。
障害者雇用枠では、業務内容の調整、勤務時間の配慮、静かな作業環境、定期的な面談など、障害特性に応じた配慮を相談できる場合があります。ただし、配慮の内容は企業や職場によって異なるため、応募前や面接時に確認しておくことが大切です。
「支援や配慮を受けながら、企業で働きたい」という方にとって、選択肢の一つになります。
就労継続支援A型
就労継続支援A型は、一般企業での就労が難しい障害のある方が、事業所と雇用契約を結んで働く障害福祉サービスです。雇用契約があるため、原則として最低賃金が適用されます。
仕事内容は事業所によって異なり、軽作業、清掃、パソコン作業、食品製造、施設外就労などさまざまです。スタッフの支援を受けながら働けるため、いきなり一般企業で働くことに不安がある方にも検討しやすい選択肢です。
利用には、市区町村による支給決定や障害福祉サービス受給者証が必要です。障害者手帳がない場合でも、医師の診断書や意見書などにより利用できる可能性がありますが、判断は自治体や本人の状況によって異なります。
就労継続支援B型
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに、生産活動や作業に取り組む障害福祉サービスです。体調や生活リズムに不安がある方、短時間から社会参加を始めたい方が利用する場合があります。
B型では賃金ではなく、作業に応じた「工賃」が支払われます。工賃の金額は事業所や作業内容、利用日数によって大きく異なります。全国平均はありますが、実際の金額は個人ごとに変わるため、見学時に確認することが大切です。
就労継続支援B型は、「生活を整えながら働く練習をしたい」「自分のペースで社会との接点を持ちたい」という方にとって、選択肢の一つになります。
在宅ワーク・リモートワーク
在宅ワークやリモートワークは、自宅で仕事をする働き方です。通勤の負担や対人コミュニケーションの負担を減らせる場合があり、体調や特性によっては働きやすいと感じる人もいます。
仕事内容には、データ入力、ライティング、デザイン、プログラミング、オンライン事務などがあります。ただし、在宅ワークは自己管理が必要です。納期管理、連絡対応、生活リズムの維持が負担になる場合もあるため、自分の得意・不得意を確認しながら検討しましょう。
短時間パート・アルバイト
フルタイム勤務が難しい場合は、短時間のパートやアルバイトから始める方法もあります。週2〜3日、1日数時間など、無理のない範囲で働きながら、少しずつ生活リズムや体力を整えていく考え方です。
短時間勤務でも、仕事内容や職場環境によって負担は変わります。応募前に、勤務時間、業務内容、休憩の取りやすさ、相談できる人の有無を確認しておくと安心です。
一般就労と福祉的就労の違い
「一般就労」「障害者雇用」「福祉的就労」は似ているように見えますが、制度上の位置づけが異なります。違いを知っておくと、自分に合う選択肢を考えやすくなります。
一般就労とは
一般就労とは、企業や事業所と雇用契約を結んで働くことです。労働基準法などの労働関係法令のもとで働き、賃金、労働時間、社会保険などのルールが適用されます。
一般就労には、障害の有無にかかわらず応募する一般枠と、障害のある方を対象とした障害者雇用枠があります。障害者雇用枠も、企業と雇用契約を結んで働くため、一般就労に含まれます。
福祉的就労とは
福祉的就労とは、障害福祉サービスを利用しながら働く形を指します。代表的なものに、就労継続支援A型と就労継続支援B型があります。
A型は雇用契約を結んで働く形で、B型は雇用契約を結ばずに生産活動へ参加する形です。どちらも、支援を受けながら働く機会を得られる点が特徴です。
障害者雇用は福祉的就労ではなく一般就労に含まれる
障害者雇用枠は、福祉的就労ではなく一般就労の一つです。企業と雇用契約を結び、賃金を受け取って働きます。
一方、就労継続支援A型・B型は障害福祉サービスとして利用する働き方です。違いを整理するときは、「企業との雇用契約があるか」「障害福祉サービスとして利用するものか」を確認すると理解しやすくなります。
自分に合う選択肢を判断するための基準
働き方の選択肢が複数あると、「どれを選べばよいかわからない」と迷うことがあります。ここでは、判断するときに見ておきたいポイントを整理します。
手帳や診断の有無で利用できる制度が変わる
利用できる制度は、障害者手帳の有無、医師の診断、自治体の判断、本人の状況によって変わります。
- 障害者手帳がある場合:障害者雇用枠や障害福祉サービスを検討しやすくなります。
- 診断書や医師の意見書がある場合:手帳がなくても、就労移行支援や就労継続支援を利用できる可能性があります。
- 診断を受けたばかりの場合:主治医、市区町村の障害福祉担当窓口、相談支援専門員などに確認することが大切です。
「手帳がないから利用できない」と自己判断せず、まずは自治体の窓口や支援機関に相談してみましょう。
体調や生活リズムの安定度で選び方が変わる
働き方を選ぶときは、収入だけでなく、現在の体調や生活リズムも大切な判断材料になります。
- 毎日決まった時間に通勤できる場合:障害者雇用枠や短時間勤務を検討しやすい状態です。
- 体調に波があり週数日の通所から始めたい場合:就労継続支援A型、B型、就労移行支援などを検討できます。
- 外出の負担が大きい場合:在宅ワークや、短時間から通える支援サービスを検討する方法があります。
無理に高い目標を設定するよりも、今の状態に合う働き方から始めることが、長く続けるための土台になります。
働く時間・収入・支援の手厚さで比較する
選択肢を比較するときは、「働く時間」「収入」「支援の手厚さ」の3つを見ておくと整理しやすくなります。
| 選択肢 | 働く時間の目安 | 収入の考え方 | 支援の特徴 |
|---|---|---|---|
| 障害者雇用枠 | フルタイムから短時間まで職場による | 給与は職種や勤務時間により異なる | 職場で合理的配慮を相談できる場合がある |
| 就労継続支援A型 | 短時間勤務が中心の事業所もある | 雇用契約に基づく賃金が支払われる | スタッフの支援を受けながら働ける |
| 就労継続支援B型 | 本人の状態に合わせて調整されることが多い | 賃金ではなく工賃が支払われる | 体調や生活面に配慮しながら取り組みやすい |
| 在宅ワーク | 案件や契約内容による | 仕事量やスキルにより大きく異なる | 自己管理が中心になる |
| 短時間パート・アルバイト | 週数日・数時間から検討できる | 時給や勤務時間により異なる | 支援の有無は職場による |
収入だけで決めると、体調や特性に合わず続けにくくなる場合があります。今の自分に必要な支援の量も合わせて考えましょう。
働き方を考えるときに知っておきたい経済的な支援制度
働き方を変える時期には、収入が減ったり、生活費への不安が出たりすることがあります。利用できる可能性がある公的制度を知っておくと、早めに相談しやすくなります。
障害年金
障害年金は、病気や障害によって生活や仕事に支障が出ている場合に、一定の要件を満たすと受け取れる公的年金です。障害基礎年金と障害厚生年金があり、初診日に加入していた年金制度などによって種類が変わります。
障害基礎年金は、原則として障害等級1級または2級に該当する場合が対象です。障害厚生年金は、厚生年金加入中に初診日があり、障害等級1級から3級に該当する場合などが対象になります。
受給には、初診日の確認、保険料納付要件、障害の状態など複数の条件があります。発達障害でも、日常生活や仕事への影響の程度によって対象となる可能性がありますが、個別判断になるため、年金事務所や社会保険労務士、主治医などに相談するとよいでしょう。
傷病手当金
傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の病気やけがで仕事に就けず、給与を受けられない場合などに支給される制度です。国民健康保険では原則として対象にならないため、加入している健康保険の種類を確認する必要があります。
主な条件は、業務外の病気やけがによる療養であること、仕事に就けない状態であること、連続する3日間の待期期間を含めて4日以上仕事に就けないこと、給与の支払いがないことなどです。給与が一部支払われている場合は、差額支給になることがあります。
支給期間は、支給開始日から通算して最長1年6か月です。退職後も一定の条件を満たすと継続して受け取れる場合がありますが、要件があるため、在職中から健康保険組合や協会けんぽなどに確認しておきましょう。
生活困窮者自立支援制度
生活困窮者自立支援制度は、生活に困りごとや不安がある方が相談できる公的な支援制度です。生活保護を受ける前の段階でも、収入、住まい、仕事、家計などについて相談できる場合があります。
支援内容には、自立相談支援、就労準備支援、家計改善支援、住居確保給付金などがあります。住居確保給付金は、離職などにより住居を失うおそれがある方に対して、一定の要件のもとで家賃相当額を支給する制度です。
窓口は自治体によって名称が異なります。「くらし・しごと相談センター」「生活自立相談窓口」などの名称で設置されていることがあります。困ってから一人で抱え込まず、早めに地域の相談窓口を確認しましょう。
一般就労が難しいと感じたときの相談先
働き方に迷ったときは、一人で判断しようとしなくても大丈夫です。就労や生活について相談できる窓口があります。
市区町村の障害福祉担当窓口
市区町村の障害福祉担当窓口では、障害福祉サービスの利用申請、受給者証、相談支援、手帳制度などについて相談できます。就労継続支援A型・B型や就労移行支援の利用を考えている場合は、まず確認したい窓口です。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害のある方や家族の相談に対応する専門機関です。生活、就労、対人関係、支援機関の利用などについて相談できる場合があります。
地域によって相談方法や対象が異なるため、住んでいる都道府県や自治体の情報を確認しましょう。
ハローワークの専門援助窓口
全国のハローワークには、障害のある求職者向けの専門窓口があります。障害者雇用枠の求人、職業相談、応募書類や面接の相談などを受けられます。
障害者雇用で働きたい場合は、一般の求人検索だけでなく、専門援助窓口で相談することで、自分の状況に合う求人を探しやすくなることがあります。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、就業面と生活面を一体的に支援する機関です。就職前の準備、職場定着、生活リズム、金銭管理、関係機関との連携などを相談できる場合があります。
「仕事だけでなく生活面も不安がある」「就職後も相談できる場所がほしい」という方にとって、心強い相談先の一つです。
就労移行支援を使って準備する方法
就労移行支援は、一般就労を目指す障害のある方が、働くために必要なスキルや生活習慣を身につけるための障害福祉サービスです。標準利用期間は原則2年間です。
訓練内容は事業所によって異なりますが、ビジネスマナー、パソコン訓練、コミュニケーション練習、体調管理、応募書類の作成、面接練習、職場実習などを行う場合があります。
利用の一般的な流れは、次のとおりです。
- 市区町村の障害福祉担当窓口に相談する
- 利用したい事業所を探し、見学や体験をする
- サービス利用の申請を行う
- 受給者証の交付後、通所を開始する
- 訓練や就職活動の支援を受けながら一般就労を目指す
就職後も、一定期間の定着支援を受けられる場合があります。事業所ごとに支援内容や雰囲気が異なるため、複数の事業所を見学して比較することも大切です。
発達障害のある方が職場で長く働くために意識したいこと
就職できた後も、「長く続けられるか」という不安を感じる人は多いものです。職場定着のためには、自分の特性を理解し、必要な配慮を具体的に伝えることが役立つ場合があります。
自分の特性を言葉にして伝える
職場で困りごとを減らすためには、自分の苦手なことや配慮してほしいことを、できるだけ具体的に伝えることが大切です。このように、自分に必要な支援や配慮を伝える力を「セルフアドボカシー」と呼ぶことがあります。
たとえば、「口頭の指示だけだと聞き漏らしやすいため、メモやチャットでも確認できると助かります」「複数の作業を同時に進めると混乱しやすいため、優先順位を確認しながら進めたいです」といった伝え方があります。
最初からうまく伝えられなくても問題ありません。就労移行支援や相談機関で、伝え方を練習することもできます。
職場体験や実習を活用する
就労移行支援などを利用している場合、企業での職場実習に参加できることがあります。実際に働く前に、職場の雰囲気、業務内容、指示の出され方、人との関わり方を体験できるため、ミスマッチを減らすきっかけになります。
実習の有無や期間、内容は事業所や企業によって異なります。給与が発生しない場合もあるため、参加前に条件を確認しておきましょう。
同じような悩みを持つ人の選択例
ここでは、一般的によくあるケースをもとにした架空の例を紹介します。実際の進み方は一人ひとり異なりますが、選択肢を考える参考にしてください。
福祉的就労から一般就労を目指した例
ADHDの診断を受けた20代女性の例です。一般就労でミスが続き、自信を失っていました。最初は就労継続支援A型を利用し、スタッフと一緒に作業手順の確認方法やメモの取り方を練習しました。
その後、体調や生活リズムが安定してきたため、就労移行支援を利用して事務職に必要なスキルを学び、障害者雇用枠での就職を目指しました。焦らず段階を分けたことで、自分に合う働き方を考えやすくなった例です。
障害者雇用枠で働き続けている例
ASDの診断を受けた30代男性の例です。一般枠での就職活動に不安があり、ハローワークの専門援助窓口に相談しました。データ入力の仕事に応募し、口頭だけでなく文書でも指示をもらえるよう相談しました。
職場側と配慮内容を確認したことで、業務の見通しを立てやすくなり、安定して働きやすくなりました。苦手なことを具体的に伝えることが、職場定着につながった例です。
在宅ワークから少しずつ仕事を始めた例
通勤や対人関係の負担が大きかった20代女性の例です。外で働くことに強い疲れを感じていたため、まずは在宅でできるライティングの小さな案件から始めました。
最初は仕事量を増やしすぎず、納期を守れる範囲で取り組みました。生活リズムを整えながら、少しずつ仕事の量を調整していった例です。在宅ワークは自己管理が必要ですが、特性や体調に合う場合は選択肢の一つになります。
まとめ|一般就労が難しいと感じたら選択肢を知ることから始めよう
一般就労がうまくいかなかった経験は、本人の能力や努力だけで決まるものではありません。障害特性、職場環境、支援の有無、体調の波など、さまざまな要因が関係している場合があります。
障害者雇用枠、就労継続支援A型・B型、就労移行支援、短時間勤務、在宅ワークなど、働き方には複数の選択肢があります。大切なのは、今の自分の状態に合う方法を知り、無理のない形で次の一歩を考えることです。
一人で判断するのが難しいときは、市区町村の障害福祉担当窓口、発達障害者支援センター、ハローワークの専門援助窓口、障害者就業・生活支援センターなどに相談できます。自分を責めすぎず、利用できる支援を確認しながら、自分に合った働き方を探していきましょう。
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