精神障害を隠して働くのが限界なら知っておきたい「オープン就労」という選択肢

就労支援について

「精神障害のことを職場に言えないまま働いている」「体調がつらいのに、周囲に相談できない」と悩んでいませんか。

障害や病気を開示せずに働くクローズ就労は、働き方の選択肢が広い一方で、必要な配慮を求めにくく、心身の負担が大きくなる場合があります。限界を感じているなら、オープン就労や障害者雇用、就労支援機関への相談など、別の選択肢を知っておくことが大切です。

この記事では、精神障害を隠して働くことに限界を感じている方に向けて、クローズ就労とオープン就労の違い、合理的配慮、相談先、利用できる支援制度について解説します。辞めることを急かしたり、オープン就労を押しつけたりするものではありません。自分に合う働き方を考えるための参考にしてください。

クローズ就労で限界を感じる理由

クローズ就労とは、障害や診断名、体調のことを職場に伝えずに働く方法です。一般の採用枠で働くため、職種や給与の選択肢が広がりやすい一方で、障害特性や体調に合わせた配慮を求めにくい面があります。

精神障害を抱えながら、診断名や症状を隠して働き続ける負担は、業務量だけでは説明しきれません。体調が悪くても言い出せない、通院や休憩の相談がしにくい、ミスを強く恐れて緊張が続くなど、見えにくい負担が積み重なることがあります。

クローズ就労を選んだ理由は人によって異なります。差別や偏見が怖かった、キャリアへの影響が心配だった、できるだけ周囲に知られたくなかったなど、どの理由も自然なものです。

限界を感じているとしても、それは本人の弱さとは限りません。必要な配慮を受けにくい環境で、長く踏ん張り続けてきた結果として、心身の負担が大きくなっている可能性があります。

オープン就労とは?クローズ就労との違い

クローズ就労とオープン就労の基本

精神障害のある方の働き方には、大きく分けて「クローズ就労」と「オープン就労」があります。

  • クローズ就労:障害や診断名を職場に伝えず、一般の採用枠で働く方法です。職種や給与の選択肢が広がりやすい一方、障害特性に基づく具体的な配慮は求めにくくなります。
  • オープン就労:障害や診断名、配慮してほしい内容を雇用主に伝え、必要な配慮を相談しながら働く方法です。障害者雇用枠で働く場合もあれば、一般枠で入社した後に開示する場合もあります。

クローズ就労とオープン就労の比較

比較項目 クローズ就労 オープン就労
職場への開示 原則として伝えない 必要な範囲で伝える
配慮の相談 障害特性に基づく相談はしにくい 配慮内容を相談しやすい
職種・求人の幅 広い傾向がある 求人によって限られる場合がある
精神的な負担 隠す負担が大きくなる場合がある 隠す負担が軽くなる場合がある
働き続けやすさ 配慮が得にくいと負担が増えやすい 環境が合えば定着しやすい場合がある

どちらが正解というものではありません。体調、働き方の希望、職場環境、収入面、周囲に伝えることへの抵抗感などを整理しながら、自分に合う方法を検討することが大切です。

雇用分野における合理的配慮とは

雇用分野では、障害者雇用促進法に基づき、事業主は過重な負担にならない範囲で、障害のある人に合理的配慮を提供する義務があります。合理的配慮とは、障害のある人が働くうえで支障となっている事情を改善するために、本人と事業主が話し合いながら必要な対応を検討するものです。

また、2024年4月1日からは、改正障害者差別解消法により、事業者による合理的配慮の提供も義務化されました。ただし、雇用分野については主に障害者雇用促進法に基づいて扱われるため、求人応募や職場での配慮を考える場合は、雇用分野のルールとして整理しておくと理解しやすくなります。

合理的配慮は、本人の希望がすべてそのまま認められる制度ではありません。本人の状態、業務内容、職場の体制、企業側の負担などを踏まえ、話し合いによって検討されます。

オープン就労で相談しやすくなる配慮の例

オープン就労にすることで、体調や特性に応じた配慮を職場に相談しやすくなる場合があります。配慮の内容は一律ではなく、本人の状態や職場環境によって異なります。

  • 業務量や残業時間の調整
  • 通院日の勤務調整
  • 休憩室の利用や短時間の離席
  • 口頭指示ではなく、メモやチャットで指示を受ける
  • 定期面談で体調や困りごとを共有する
  • 時差出勤やフレックスタイムの相談
  • 人の多い場所や大きな音が苦手な場合の席配置の相談

たとえば、口頭で多くの指示を受けると混乱しやすい方は、指示をメモやチャットで残してもらうことで業務に取り組みやすくなる場合があります。残業が続くと体調を崩しやすい方は、業務量や勤務時間の調整を相談することも考えられます。

ただし、どの配慮が必要かを一人で整理するのは難しいこともあります。その場合は、就労移行支援、障害者就業・生活支援センター、ハローワーク専門援助部門などの支援機関に相談し、伝え方を整理する方法もあります。

クローズ就労を続ける場合に注意したいこと

クローズ就労を続けること自体が悪いわけではありません。障害や病気を誰にどこまで伝えるかは、本人が慎重に考えてよいことです。

一方で、体調不良を隠し続けたり、必要な休憩や通院を相談できなかったりする状態が長く続くと、心身の負担が大きくなる場合があります。睡眠不足、強い緊張、過度なストレスが続くと、症状が悪化したり、休職や退職を検討せざるを得なくなったりすることもあります。

「もう少し頑張れば大丈夫」と感じていても、欠勤や遅刻が増えている、帰宅後に何もできない、休日も回復しない、涙が出る、眠れないなどの状態が続く場合は、早めに主治医や支援機関へ相談することが大切です。

精神障害者保健福祉手帳は制度利用の選択肢を広げるもの

精神障害者保健福祉手帳を持っていても、必ず職場に開示しなければならないわけではありません。手帳を使うかどうか、誰に伝えるかは、状況に応じて検討できます。

一方で、手帳があることで利用しやすくなる制度や支援もあります。

  • 障害者雇用枠への応募
  • 税制上の障害者控除
  • 自治体や公共交通機関などの各種支援
  • 就労支援機関での相談や手続きの説明を受けやすくなる場合

ただし、就労移行支援や就労継続支援A型・B型などの障害福祉サービスを利用するには、原則として市区町村による支給決定が必要です。障害者手帳がなくても、医師の診断書や意見書などにより対象となる場合がありますが、具体的な判断は自治体や本人の状況によって異なります。

障害者雇用枠は「諦め」ではなく選択肢の一つ

障害者雇用枠に対して、「単純作業しかない」「給与が低い」「キャリアが止まる」といったイメージを持つ方もいるかもしれません。実際に、求人内容や給与水準は企業によって差があります。

一方で、近年は事務職、専門職、在宅勤務、短時間勤務など、障害者雇用枠の働き方も少しずつ多様化しています。すべての求人が希望に合うわけではありませんが、配慮を受けながら働き続ける選択肢として検討する価値はあります。

民間企業の法定雇用率は、2026年6月時点で2.5%です。2026年7月1日からは2.7%へ引き上げられる予定です。制度や求人状況は変わるため、最新情報は厚生労働省やハローワークの情報を確認することが大切です。

一般枠でもオープンにできる場合があります

オープン就労は、必ず障害者雇用枠で働くことだけを意味するわけではありません。一般枠で採用された後に、体調や障害について必要な範囲で上司や人事に伝え、配慮を相談するケースもあります。

ただし、採用後の開示は職場の受け入れ体制や業務内容によって対応が異なります。伝える相手、伝える範囲、配慮してほしい内容を事前に整理しておくことが大切です。

一人で判断するのが不安な場合は、障害者就業・生活支援センターやハローワーク専門援助部門、就労移行支援などに相談しながら進める方法もあります。

相談できる支援機関・制度

限界を感じてから一人で急いで決める必要はありません。まずは、相談できる場所を知っておくことが大切です。

支援機関・制度 内容の概要 利用時の注意点
就労移行支援 一般就労に向けた訓練、応募書類の準備、面接練習、職場定着支援などを行う障害福祉サービス 利用期間は原則2年以内。利用には市区町村の支給決定が必要です。
就労継続支援A型 雇用契約を結び、支援を受けながら働く障害福祉サービス。原則として最低賃金が適用されます。 利用には市区町村の支給決定が必要です。仕事内容や勤務時間は事業所により異なります。
就労継続支援B型 雇用契約を結ばず、体調や状況に合わせて生産活動に参加する障害福祉サービス 工賃は事業所や作業内容により異なります。利用には市区町村の支給決定が必要です。
障害者就業・生活支援センター 就労面と生活面の相談を一体的に行う地域の支援機関。「なかぽつ」と呼ばれることもあります。 対象地域や相談内容はセンターにより異なるため、最寄りの窓口を確認します。
ハローワーク専門援助部門 障害のある方の就職相談、求人紹介、職業相談などを行う窓口 障害者雇用枠の求人や応募方法について相談できます。

就労継続支援A型の平均賃金月額は、厚生労働省の令和6年度実績で91,451円と公表されています。ただし、実際の賃金は勤務時間、地域、仕事内容、事業所によって異なります。

障害基礎年金を受給している方は、年金と就労支援を組み合わせながら生活の基盤を整える場合もあります。令和8年度の障害基礎年金2級は、昭和31年4月2日以後生まれの方で年額847,300円です。年金額は毎年改定されるため、最新情報は日本年金機構の公式サイトで確認してください。

オープン就労を考えるときの進め方

1. まず体調と困りごとを整理する

最初に、現在の働き方で何が負担になっているのかを整理します。勤務時間、業務量、人間関係、通勤、音や光などの環境、指示の受け方など、具体的に書き出すと考えやすくなります。

2. 必要な配慮を言葉にする

「配慮してほしい」と伝えるだけでは、職場側も対応を考えにくい場合があります。「口頭指示だけだと抜け漏れが起きやすいため、メモでも確認したい」「通院日は残業を避けたい」など、具体的に伝えられる形にしておくことが大切です。

3. 主治医や支援機関に相談する

開示するかどうか、どこまで伝えるかは慎重に考える必要があります。主治医、障害者就業・生活支援センター、ハローワーク専門援助部門、就労移行支援などに相談しながら、伝え方を整理すると安心です。

4. 転職だけでなく、今の職場での相談も検討する

オープン就労を考えるとき、必ず転職しなければならないわけではありません。今の職場で人事や上司に相談し、働き方を調整できる場合もあります。ただし、職場の体制によって対応は異なるため、一人で抱え込まず、支援機関に相談しながら進めることが大切です。

よくある質問

Q1. 一度開示したら、取り消すことはできますか?

法律上、開示した情報をずっと同じ範囲で伝え続けなければならないという決まりがあるわけではありません。ただし、一度伝えた情報を完全になかったことにするのは現実的に難しい場合があります。

そのため、誰に、どこまで、どのタイミングで伝えるかを事前に整理しておくことが大切です。就労支援機関に相談しながら、開示の範囲や伝え方を考える方法もあります。

Q2. クローズで採用された後に開示するのはリスクがありますか?

採用後に障害や体調について開示すること自体が、直ちに禁止されているわけではありません。ただし、採用時に健康状態や業務に関わる重要事項について質問され、事実と異なる申告をしていた場合などは、企業の就業規則や個別の事情によって問題になる可能性があります。

判断はケースによって異なるため、採用後に開示するか迷う場合は、障害者就業・生活支援センターやハローワーク専門援助部門などに相談してから進めると安心です。

Q3. 精神障害者保健福祉手帳がなくてもオープン就労はできますか?

手帳がなくても、医師の診断書や主治医の意見をもとに、一般枠で職場に配慮を相談できる場合があります。ただし、障害者雇用枠での応募や障害福祉サービスの利用では、手帳や市区町村の支給決定が関係する場合があります。

利用できる制度は自治体や本人の状況によって異なるため、まずは主治医、自治体の障害福祉窓口、ハローワーク、障害者就業・生活支援センターなどに確認しましょう。

Q4. オープン就労にすれば必ず働きやすくなりますか?

オープン就労にすれば、必ずすべての悩みが解決するわけではありません。配慮を相談しやすくなる一方で、求人の選択肢、給与、職場の理解度などは企業によって差があります。

大切なのは、オープン就労を「唯一の正解」と考えるのではなく、自分の体調や希望に合う働き方を探すための選択肢の一つとして捉えることです。

まとめ

精神障害を隠してクローズ就労を続けることには、業務以外にも「隠し続ける負担」がかかる場合があります。限界を感じているなら、それは本人の弱さではなく、必要な配慮を受けにくい環境で無理を重ねてきたサインかもしれません。

オープン就労は、障害や体調について必要な範囲で伝え、配慮を相談しながら働く方法です。障害者雇用枠だけでなく、一般枠で開示して働く場合もあります。ただし、働き方の合う・合わないは人によって異なるため、焦って決める必要はありません。

まずは、今の働き方で何が負担になっているのかを整理し、主治医や支援機関に相談することから始めてみましょう。クローズ就労を続ける、オープン就労に切り替える、就労支援を利用するなど、選択肢を知ることが、自分に合う働き方を考える第一歩になります。

免責事項

本記事は、就労に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医療的判断、法的アドバイス、個別の就労支援を行うものではありません。制度の内容や数値は変更される可能性があります。利用要件、手続き、年金額、雇用制度の詳細については、厚生労働省、日本年金機構、自治体、ハローワーク、各支援機関などの公式情報をご確認ください。体調に不安がある場合は、主治医または支援者に相談してください。

参考資料

福岡市博多区の 就労継続支援A型・B型事業所 「パラスポ」のご案内

当事業所では、「無理のない通所」を第一に考え、 一人ひとりの体調や目標に合わせたサポートを行っています。

  • ✓ 海が見えるリラックスできるロケーション
  • ✓ 社会復帰からの一般就労をしっかりサポート
  • ✓ 通所も安心の「送迎あり」(※B型利用者のみ)
  • ✓ 美味しい「昼食提供あり」(※条件あり)

選べる作業内容

【A型】の仕事内容
  • AIを使用したWEBコンテンツ制作
  • PCデータ入力
  • リラクゼーションセラピスト
  • 和菓子などの販売、接客業務
  • 食器洗浄などの軽作業
【B型】の仕事内容
  • PCデータ入力
  • 室内で座って行える軽作業

「自分に合っているか不安…」という方も、まずは事業所の雰囲気を見学してみませんか?
ご家族や支援機関の方と同伴での見学・体験も大歓迎です。

就労継続支援A型・B型事業所 パラスポ
〒812-0021
福岡市博多区築港本町13-6
ベイサイドプレイス博多C館3F
Mail:paraspoism002@gmail.com

コメント

タイトルとURLをコピーしました