「就労継続支援を勧められたものの、A型とB型のどちらが自分に合っているか分からない」と悩む方もいるのではないでしょうか。
就労継続支援A型とB型の大きな違いは、事業所と雇用契約を結ぶかどうかです。
- A型:事業所と雇用契約を結び、賃金を受け取りながら働く
- B型:雇用契約を結ばず、生産活動などに参加して工賃を受け取る
A型とB型では、利用対象、通所の条件、受け取る金額、求められる働き方が異なります。どちらが合っているかは、収入だけでなく、現在の体調、通所できる日数、希望する仕事内容、必要な配慮などを踏まえて考えることが大切です。
本記事では、就労継続支援A型とB型の違い、賃金・工賃の目安、利用に向いている人の傾向、事業所を選ぶ際の確認点を解説します。
就労継続支援とは
就労継続支援は、一般企業などで働くことが難しい障害のある方や対象となる難病のある方に、就労や生産活動の機会を提供する障害福祉サービスです。
仕事や作業に参加する機会を設けるとともに、就労に必要な知識や能力の向上・維持に向けた支援を行います。
事業所によっては、通所を続けることが外出習慣や人とのつながりを持つきっかけになる場合もあります。ただし、就労継続支援は単なる居場所ではなく、就労や生産活動の機会を提供する福祉サービスである点を理解しておきましょう。
就労継続支援にはA型とB型がある
就労継続支援は、雇用契約の有無によってA型とB型に分かれます。
A型では、事業所と雇用契約を結び、労働者として働きます。一方、B型では雇用契約を結ばず、本人の状況に合わせて生産活動などに参加します。
A型がB型より上、B型がA型より下という関係ではありません。本人の希望や現在の状態によって、適したサービスは異なります。
就労継続支援の利用料金
就労継続支援の利用者負担には、所得に応じた月額上限が設けられています。生活保護を受けている世帯や市町村民税非課税世帯では、負担上限月額が0円となります。
18歳以上の障害者の場合、所得を判断する世帯の範囲は、原則として本人と配偶者です。そのため、成人した方が親と同居している場合、通常は親の所得を含めて判定しません。
ただし、本人や配偶者の課税状況によっては利用者負担が発生します。また、昼食代、交通費、材料費などが別途必要になる事業所もあります。実際の負担額は、市区町村の障害福祉担当窓口や利用を検討している事業所に確認してください。
就労継続支援A型とB型の主な違い
雇用契約の有無
A型では、利用者と事業所が雇用契約を結びます。利用者は福祉サービスの利用者であると同時に、事業所に雇用される労働者でもあります。
勤務時間、休日、業務内容、賃金などは雇用契約や就業規則に基づいて定められます。労働基準法をはじめとする労働関係法令も適用されます。
B型では、事業所との雇用契約は結びません。労働者として賃金を受け取るのではなく、生産活動などによる収益から、必要経費を除いた金額などを原資として工賃を受け取ります。
賃金と工賃の違い
A型で受け取るお金は、雇用契約に基づく賃金です。原則として、その地域の最低賃金が適用されます。
ただし、都道府県労働局長の許可を受けた場合には、最低賃金の減額特例が適用されることがあります。雇用契約を結ぶ際は、時給、勤務時間、手当、控除などを確認しておきましょう。
B型で受け取るお金は工賃です。工賃には最低賃金の適用がなく、金額や計算方法は事業所の生産活動、利用日数、作業内容などによって異なります。
通所日数や勤務時間の違い
A型は雇用契約を結ぶため、契約で決められた勤務日や勤務時間に沿って働くことが基本です。体調や障害の特性に応じた配慮を相談できる場合もありますが、勤務条件は事業所ごとに異なります。
B型はA型よりも通所日数や利用時間を調整しやすい傾向があります。ただし、「週1日から必ず利用できる」「好きな時間だけ通える」とは限りません。
利用日数や時間は、自治体の支給決定、個別支援計画、本人の状況、事業所の受け入れ体制などを踏まえて決められます。
就労継続支援A型の特徴
A型の利用対象者
A型は、一般企業などで働くことが難しいものの、適切な支援があれば雇用契約に基づいて継続的に働ける方を対象としています。
対象者の例として、次のような方が挙げられます。
- 就労移行支援を利用したものの、一般企業への就職に結びつかなかった方
- 特別支援学校を卒業後に就職活動を行ったものの、雇用に結びつかなかった方
- 一般企業などで働いた経験があり、現在は雇用関係にない方
利用開始時は65歳未満であることが基本です。ただし、65歳になる前から継続して障害福祉サービスを利用していた場合など、一定の要件を満たせば65歳以降も利用できることがあります。
実際に利用できるかどうかは、市区町村が本人の状況を確認したうえで決定します。
A型の主な仕事内容
A型の仕事内容は事業所によって異なります。主な例は次のとおりです。
- データ入力や書類作成
- Webサイトの更新やデザイン補助
- 清掃や施設管理
- 商品の梱包、検品、発送
- 飲食店での接客や調理補助
- 農作業や食品製造
仕事には、納期、品質、勤務時間などの一定の基準が設けられている場合があります。仕事内容だけでなく、必要な作業速度、対人対応の有無、休憩の取り方なども確認しましょう。
A型の平均賃金
厚生労働省が公表している令和6年度実績では、A型事業所の平均賃金月額は全国平均で91,451円です。
ただし、この金額は全国の事業所を集計した平均です。実際の賃金は、地域別最低賃金、勤務日数、勤務時間、欠勤状況、手当などによって異なります。
平均額をそのまま受け取れるとは限らないため、応募や契約の前に求人票や雇用契約書で確認することが重要です。
A型の利用期間
A型には、就労移行支援のような一律の標準利用期間はありません。
ただし、障害福祉サービスの支給決定には更新があり、雇用契約も勤務状況や事業所の運営状況などによって変更・終了する場合があります。「希望すれば無期限に働き続けられる」とは限らない点に注意しましょう。
就労継続支援B型の特徴
B型の利用対象者
B型は、一般企業やA型で雇用契約を結んで働くことが、現時点では難しい方を対象としています。
対象者の例として、次のような方が挙げられます。
- 就労経験があり、年齢や体力などの理由で一般企業で働くことが難しくなった方
- 一般企業への就職に結びつかず、就労や生産活動を通じた継続的な支援が必要な方
- 就労面の課題や必要な配慮について、アセスメントを受けた方
令和7年10月から就労選択支援が始まりました。新たにB型を利用する場合、本人の年齢、就労経験、障害年金の受給状況などによっては、事前に就労選択支援によるアセスメントが必要になります。
対象となる条件や例外は状況によって異なるため、市区町村の障害福祉担当窓口や相談支援事業所に確認してください。
B型の主な活動内容
B型の活動内容も事業所によってさまざまです。袋詰めや組み立てなどの作業だけでなく、パソコン作業、清掃、農作業、食品製造、手工芸品の制作、施設外での作業などを行う事業所もあります。
作業の難易度、作業量、納期の有無、利用者に求められる役割は事業所によって異なります。「B型だから簡単な作業だけ」とは限りません。
見学時には、作業内容だけでなく、困ったときの相談方法、休憩の取り方、体調不良時の連絡ルールなども確認しましょう。
B型の平均工賃
厚生労働省が公表している令和6年度実績では、B型事業所の平均工賃月額は全国平均で24,141円です。
工賃は、事業所の生産活動による収益、利用日数、作業内容、工賃規程などによって大きく異なります。平均工賃月額は、個人が毎月受け取れる金額を保証するものではありません。
利用を検討する際は、工賃の平均額だけでなく、計算方法、支払日、交通費や昼食代の負担なども確認してください。
B型の利用期間
B型にも一律の標準利用期間はありません。本人の希望や支援の必要性を踏まえ、自治体の支給決定を更新しながら利用することがあります。
B型の利用後に、A型、就労移行支援、障害者雇用、一般就労などを目指すことも可能です。一方で、継続してB型を利用することが本人に合っている場合もあります。
特定の進路を急いで決めるのではなく、本人の希望や状態に合わせて支援者と相談することが大切です。
就労継続支援A型の利用が合う可能性がある人
決められた勤務日に継続して通える人
A型では雇用契約に沿って勤務するため、ある程度安定して通勤・通所できることが求められます。
ただし、必要な勤務日数や勤務時間は事業所によって異なります。体調に波がある場合は、欠勤や遅刻時の連絡方法、勤務時間の調整、通院への配慮などを事前に確認しましょう。
雇用契約に基づく賃金を得たい人
A型では、原則として最低賃金が適用されるため、B型よりも月額の収入が高くなる傾向があります。
一方で、受け取れる金額は勤務時間などによって変わります。収入面だけで判断せず、仕事内容や勤務条件を無理なく続けられるかも確認することが必要です。
仕事としての経験を積みたい人
A型では、雇用契約に基づいて仕事をするため、勤務時間を守ること、報告・連絡・相談を行うこと、品質を意識することなどを経験できます。
将来的に一般企業への就職を希望する方にとって、働き方を確認する機会になる場合があります。ただし、A型の利用者全員が一般就労を目指さなければならないわけではありません。
就労継続支援B型の利用が合う可能性がある人
雇用契約に沿った勤務が現時点では難しい人
体調の波が大きい、長時間の作業が難しい、決まった日数を安定して通うことに不安があるといった場合は、B型が選択肢になることがあります。
利用日数や時間は一人ひとり異なります。希望どおりのスケジュールが必ず認められるわけではないため、事業所と相談しながら無理のない利用計画を考えましょう。
支援を受けながら生産活動に参加したい人
B型では、職員の支援を受けながら、本人の状態や得意なことに応じた活動に参加します。
必要な支援や作業ペースは人によって異なります。作業内容との相性だけでなく、説明方法、休憩の取りやすさ、相談のしやすさなども確認してください。
通所や作業を継続する経験を積みたい人
長期間自宅で過ごしていた方にとって、定期的に通う場所を持つことが、外出や人との交流のきっかけになる場合があります。
ただし、通所すれば必ず生活リズムや体調が整うわけではありません。体調管理については、必要に応じて主治医や支援者とも相談しながら進めましょう。
就労継続支援事業所を選ぶ3つのポイント
1.職員の対応や事業所の雰囲気を確認する
ホームページに掲載されている情報だけでは、実際の雰囲気や支援方法までは分かりません。可能であれば、利用前に事業所を見学しましょう。
見学時には、次のような点を確認します。
- 職員が利用者にどのような言葉で接しているか
- 質問や相談をしやすい雰囲気か
- 作業スペースの音、明るさ、広さが自分に合っているか
- 困ったときに相談できる担当者がいるか
- 体調不良時の対応方法が決まっているか
本人にとって負担になりやすい環境は異なります。一般的な評判だけでなく、自分が通う場面を想像して確認することが大切です。
2.仕事内容と通所条件を確認する
同じA型やB型でも、仕事内容や求められる作業量は事業所によって異なります。
次の点を事前に確認しましょう。
- 具体的な仕事内容
- 勤務・利用する曜日と時間
- 作業の目標や納期の有無
- 休憩時間と休憩場所
- 欠席、遅刻、早退時の連絡方法
- 賃金・工賃の計算方法
体験の機会を設けている事業所もありますが、実施の有無、期間、内容、費用などは事業所によって異なります。体験が正式な労働や利用に当たるかも含め、事前に説明を受けてください。
3.無理なく通える場所か確認する
通勤・通所にかかる時間や乗り換え回数は、継続のしやすさに関係します。
晴れた日だけでなく、雨の日や混雑する時間帯も想定して、次の点を確認しましょう。
- 自宅から事業所までの所要時間
- 電車やバスの混雑状況
- 送迎の有無と利用条件
- 交通費の負担
- 通院日との調整が可能か
「自宅から何分以内ならよい」という一律の基準はありません。仕事内容や支援内容とのバランスを考え、自分が継続して通える範囲を検討してください。
就労継続支援以外の就労系障害福祉サービス
就労選択支援
就労選択支援は、本人がより適した働き方や就労先を選べるように、希望、得意なこと、作業上の課題、必要な配慮などを整理するサービスです。
実際の作業場面などを活用してアセスメントを行い、関係機関と支援の方向性を検討します。
令和7年10月から始まった制度で、B型を新たに利用する際に事前利用が必要となる場合があります。対象となるかどうかは市区町村に確認してください。
就労移行支援
就労移行支援は、一般企業などへの就職を希望する方に、就職に必要な知識や技能の習得、職場体験、求職活動、職場開拓などの支援を行うサービスです。
標準利用期間は原則2年間です。必要性が認められた場合には、一定期間の延長が認められることがあります。
就労移行支援は雇用契約に基づいて働くサービスではないため、原則として賃金はありません。生産活動を行う事業所では工賃が支払われる場合があります。
就労定着支援
就労定着支援は、就労移行支援や就労継続支援などを利用して一般企業へ就職した方に対し、働き続けるための相談や連絡調整を行うサービスです。
仕事上の悩みだけでなく、生活リズム、体調管理、金銭管理などについて相談できる場合があります。必要に応じて、本人、勤務先、医療機関、福祉関係者などの間で調整を行います。
利用開始の時期や対象となる条件があるため、就職前から支援機関に確認しておくとよいでしょう。
就労継続支援を利用するまでの流れ
1.市区町村や相談支援機関に相談する
まずは、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や相談支援事業所に相談します。
通院している場合は、主治医、精神保健福祉士、医療ソーシャルワーカーなどに相談する方法もあります。
A型とB型のどちらを利用するか決まっていない段階でも相談できます。現在の生活状況、働いた経験、希望する仕事内容、通所できそうな日数などを伝えましょう。
2.事業所を探して見学する
自治体が公開している事業所一覧、障害福祉サービスの検索サイト、相談支援事業所からの情報などを活用して候補を探します。
A型はハローワークに求人が掲載されていることもあります。複数の候補を比較し、仕事内容、勤務・利用条件、支援内容を確認してください。
3.障害福祉サービス受給者証を申請する
利用するサービスや事業所の候補が決まったら、市区町村に障害福祉サービスの支給申請を行います。
申請時には、障害者手帳、診断書、対象疾病を確認できる書類などの提出を求められる場合があります。必要書類は自治体や本人の状況によって異なります。
また、サービスの利用目的や支援方針を記載する「サービス等利用計画案」が必要です。指定特定相談支援事業者に作成を依頼する方法のほか、自治体の取扱いによってはセルフプランを提出する場合もあります。
B型を新たに利用する場合は、就労選択支援によるアセスメントが必要かどうかも確認してください。
4.契約を結んで利用を開始する
市区町村から支給決定を受け、障害福祉サービス受給者証が交付されたら、事業所と利用契約を結びます。
A型では、障害福祉サービスの利用契約に加えて、事業所との雇用契約を結びます。雇用契約書や労働条件通知書を確認し、賃金、勤務時間、休日、仕事内容などの説明を受けましょう。
B型では雇用契約は結びませんが、利用契約、個別支援計画、工賃規程、欠席時の連絡方法などを確認します。
分からない点がある場合は、そのまま契約せず、事業所や相談支援専門員、市区町村の担当者に確認することが大切です。
まとめ|A型とB型の違いを理解して自分に合う働き方を考えよう
就労継続支援A型とB型の大きな違いは、雇用契約の有無です。
A型は、事業所と雇用契約を結び、原則として最低賃金が適用される賃金を受け取りながら働きます。B型は雇用契約を結ばず、生産活動などに参加して工賃を受け取ります。
A型は契約に沿って安定して勤務できる方、B型は雇用契約に基づく勤務が現時点では難しく、支援を受けながら活動したい方に合う可能性があります。
ただし、必要な通所日数や仕事内容、支援体制は事業所によって異なります。賃金・工賃の金額だけで判断せず、見学などを通して、仕事内容、職員の対応、通いやすさ、体調不良時の対応を確認しましょう。
どのサービスが適しているか判断しにくい場合は、市区町村の障害福祉担当窓口、相談支援事業所、医療機関などと相談しながら検討することが大切です。
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