うつ病の療養中に、一日中スマホで動画やSNSを見て過ごし、「また何もできなかった」と自分を責めてしまう方もいるのではないでしょうか。
うつ病では、意欲や集中力の低下、疲れやすさ、否定的な考え方などが現れることがあります。そのため、準備や判断をあまり必要としないスマホに手が伸びやすくなることがあります。
ただし、スマホがやめられない理由は人によって異なります。うつ病だけでなく、習慣、睡眠リズム、孤独感、不安、利用しているアプリの特徴など、複数の要因が関係している可能性があります。
この記事では、うつ病の療養中にスマホを長時間見てしまう背景や、無理のない範囲で使用時間を見直す工夫、専門家へ相談する目安について解説します。
うつ病の療養中にスマホばかり見てしまう理由
うつ病の療養中にスマホが手放せなくなる理由を、単に意志の弱さだけで説明することはできません。体調や生活環境を含め、さまざまな要因が重なっている可能性があります。
ほかの活動よりも少ない負担で始められるから
うつ病では、意欲や集中力が低下し、着替え、外出、家事、人との会話などを負担に感じることがあります。
スマホは、横になったままでも操作でき、短い動画や投稿を次々に見ることができます。そのため、ほかの活動を始める気力が出ないときでも、比較的手を伸ばしやすいものです。
スマホを見ていることだけを理由に、「怠けている」「意志が弱い」と決めつける必要はありません。まずは、現在の体調や生活状況を確認することが大切です。
つらい考えから一時的に気をそらせるから
うつ病の療養中は、仕事や将来への不安、過去への後悔など、同じ考えが繰り返し浮かぶことがあります。
動画やSNSに意識を向けると、つらい考えから一時的に気をそらせる場合があります。ただし、すべてのスマホ使用が脳の防衛反応であるとは限りません。
不安を感じたときに見る、眠れないときに見る、何となく習慣で開くなど、スマホを使うきっかけは人によって異なります。
通知や自動再生によって使い続けやすいから
SNSや動画アプリには、通知、終わりのない画面表示、自動再生など、利用を続けやすくする機能があります。
新しい投稿や動画が次々に表示されるため、「あと少しだけ」と思いながら使用時間が延びることがあります。これは、うつ病の有無にかかわらず起こり得ることです。
疲れていて判断や切り替えが難しいときは、普段以上にスマホを閉じにくく感じる場合があります。
睡眠リズムの乱れが使用時間を延ばすことがあるから
夜に眠れずスマホを見る時間が増え、朝起きられないため日中も横になってスマホを使うという流れが続くことがあります。
このような場合は、スマホだけを問題にするのではなく、睡眠、服薬、日中の活動量、食事など、生活全体を確認する必要があります。
スマホの使いすぎはうつ病の療養に影響する?
スマホを長時間使用したからといって、必ずうつ病が悪化したり、回復が遅れたりするわけではありません。
一方で、夜間の使用によって睡眠が乱れる、SNSを見て気分が落ち込む、通院や食事などの日常生活に支障が出る場合は、療養の妨げになる可能性があります。
夜間の使用が睡眠リズムに影響する場合がある
スマホやタブレットなどの画面から出る光を夜遅くまで浴びると、体内時計が後ろにずれ、寝つきにくくなる場合があります。
また、刺激の強い動画、ニュース、SNSのやり取りなどによって、就寝前に気持ちが落ち着きにくくなることもあります。
夜間のスマホ使用が続いている方は、画面の明るさを下げる、就寝前は刺激の少ない内容を選ぶ、寝床から少し離れた場所に置くなど、取り入れやすい方法から試してみましょう。
情報や感情の負担が大きくなることがある
動画、ニュース、SNSなどを長時間見続けると、多くの情報に触れることになります。
うつ病の療養中は集中力が低下したり、刺激に疲れやすくなったりすることがあります。スマホを使ったあとに、頭が重い、気持ちが落ち着かない、さらに疲れたと感じる場合は、使用内容や時間を見直す目安になります。
SNSで他人と比べて落ち込むことがある
SNSには、楽しい出来事やうまくいっている場面が投稿されやすい傾向があります。
療養中にそうした投稿を見ると、「ほかの人は働いているのに、自分は何もできていない」と感じることがあります。
見たあとに気分が落ち込むアカウントは、一時的に表示を減らしたり、フォローを外したりしても問題ありません。自分の状態に合わせて、目に入る情報を調整しましょう。
必要な活動の時間が少なくなる場合がある
スマホの使用時間が長くなると、食事、入浴、服薬、通院、家族との会話などに使う時間が少なくなる場合があります。
スマホを使うこと自体を悪いと考えるのではなく、日常生活にどの程度影響しているかを確認することが重要です。
スマホばかり見てしまう自分を責めすぎないことが大切
活動できないことがうつ病の症状として現れる場合がある
うつ病では、これまでできていた家事や外出が難しくなることがあります。気力だけで解決できる問題ではありません。
活動できない日があっても、それだけで努力不足や怠けと判断する必要はありません。主治医から休養を勧められている場合は、その指示を優先しましょう。
休息とスマホの長時間使用は分けて考える
休息は療養において大切ですが、スマホを長時間見続けることが、必ずしも十分な休息になるとは限りません。
スマホを使ったあとに疲労感や落ち込みが強くなる場合は、音楽を聴く、目を閉じる、温かい飲み物を飲むなど、画面を見ない休み方も選択肢に入れてみましょう。
強い罪悪感もうつ病でみられることがある
うつ病では、自分を必要以上に責めたり、自分には価値がないと感じたりすることがあります。
「またスマホを見てしまった」と感じたときは、「今は切り替えが難しい状態なのかもしれない」と、少し距離を置いて考えてみてください。
罪悪感が強く、自分を傷つけたい気持ちや死にたい気持ちにつながっている場合は、一人で抱え込まず、早めに主治医や医療機関へ伝えることが重要です。
スマホの使用時間を少しずつ減らす工夫
スマホを急に使わないようにすると、不安やストレスが強くなることがあります。使用時間を完全にゼロにするのではなく、生活への影響を少しずつ減らすことを目標にしましょう。
スマホを使うきっかけを簡単に記録する
数日間だけ、スマホを使った時間やきっかけを大まかに記録してみましょう。
- 眠れないときに見ている
- 不安になったときにSNSを開いている
- 通知が来るたびに確認している
- 特定の動画アプリを長時間見ている
- 使ったあとに気分が落ち込んでいる
細かく記録する必要はありません。使用時間を責める材料ではなく、見直しやすい部分を探すために利用します。
必要のない通知を減らす
通知音や画面表示は、スマホを開くきっかけになります。
家族や医療機関などからの必要な連絡は残し、SNS、動画、ゲーム、ニュースなど、急いで確認する必要のない通知だけをオフにする方法があります。
すべてを一度に変更するのが負担な場合は、使用時間が長いアプリを一つ選ぶだけでも構いません。
寝床から手の届きにくい場所に置く
夜間の使用を減らしたい場合は、スマホを枕元ではなく、少し離れた机や棚に置く方法があります。
緊急連絡を受ける必要がある方は、電源を切るのではなく、必要な相手からの着信だけを受けられる設定を利用するとよいでしょう。
寝室の外に置くことが不安な場合は、まず手を伸ばしても届かない場所に移すことから始めてください。
スマホを見ない短い時間を作る
最初から長時間離れようとせず、5分から10分程度の短い時間を作ってみましょう。
「30分使ったら5分置く」「食事中だけ画面を伏せる」など、自分が取り組みやすい区切り方を選びます。
予定どおりにできなかった日があっても、失敗と考える必要はありません。少しでも離れられた時間に目を向けましょう。
画面を見ない過ごし方を用意する
スマホを置いたあとにすることがないと、すぐに手が伸びやすくなります。負担の少ない過ごし方をいくつか用意しておきましょう。
- 好きな音楽やラジオを聴く
- 温かい飲み物をゆっくり飲む
- 窓を開けて外の空気を入れる
- 無理のない範囲で体を伸ばす
- 塗り絵や簡単な落書きをする
- 紙の本や写真集を少し見る
- 家族や支援者と短い会話をする
何か有意義なことをしなければならないわけではありません。画面から目を離して休める時間を作ることが目的です。
無理のない一日の過ごし方
朝はカーテンを開けることから始める
朝起きることが難しい場合は、決まった時間に完璧に起きることを目標にせず、可能な日はカーテンを開けて自然の光を取り入れてみましょう。
朝から日中に光を浴びることは、睡眠と覚醒のリズムを整えるための手がかりになります。
ただし、体調が悪い日に無理に外出する必要はありません。主治医から生活上の指示を受けている場合は、その内容を優先してください。
日中はスマホを使う時間と置く時間を分ける
日中の使用をゼロにするのではなく、見る時間と置く時間をゆるく分けてみましょう。
タイマーやスマホの利用時間を確認できる機能を使う方法もあります。ただし、使用時間の数字を見ることでかえって自分を責めてしまう場合は、無理に記録する必要はありません。
スマホを置く時間には、食事、水分補給、服薬、洗顔など、その日に必要なことを一つだけ行う方法もあります。
夜は光と刺激を少しずつ減らす
就寝前は画面の明るさを下げ、刺激の強いニュースやSNSを避けると、気持ちを切り替えやすくなる場合があります。
スマホを完全に使わないことが難しい場合は、動画から音声に切り替える、画面を伏せる、終了時間を決めるなど、取り入れやすい方法を選びましょう。
眠れない状態が続いている場合や、昼夜が大きく逆転している場合は、生活習慣だけで解決しようとせず、主治医へ相談してください。
自宅以外で過ごす時間を作る方法
体調が安定してきた場合は、短時間だけ自宅以外で過ごすことが、スマホとの距離を見直すきっかけになる場合があります。
体調に合った場所を選ぶ
図書館、公民館、公園、家族の家など、落ち着いて過ごせる場所を選びます。
スマホを自宅に置いていく必要はありません。緊急時の連絡手段として持参し、バッグに入れる、集中モードにするなどの方法でも構いません。
外出によって疲れが強くなる方もいるため、主治医から外出や休養について指示を受けている場合は、その内容に従ってください。
就労や日中活動を希望する場合は支援機関も選択肢になる
将来的に働くことや、日中に活動する場所を持つことを希望している方は、就労系障害福祉サービスが選択肢になる場合があります。
就労継続支援A型は、一般企業で働くことが難しいものの、雇用契約に基づいて働くことが可能な方に、就労や生産活動の機会を提供するサービスです。
就労継続支援B型は、一般企業で働くことや雇用契約に基づいて働くことが難しい方に、就労や生産活動の機会を提供するサービスです。
これらはスマホの使いすぎを治療するサービスではありません。また、うつ病と診断されているだけで必ず利用できるわけではありません。
利用できるサービス、通所日数、利用時間などは、本人の希望や状態、市区町村の支給決定、サービス等利用計画、事業所の体制によって異なります。
利用を検討する場合は、主治医、市区町村の障害福祉窓口、相談支援事業所、医療機関の相談員などに、自分の体調や今後の希望を伝えて相談しましょう。
スマホの使用について専門家へ相談する目安
スマホを長く使用していることだけで、すぐに治療が必要になるとは限りません。
ただし、次のような状態がある場合は、早めに主治医や医療機関へ相談してください。
- スマホを見続けて、睡眠が大きく乱れている
- 食事や水分補給を忘れることが増えている
- 服薬や通院ができなくなっている
- SNSや動画を見たあとに強く落ち込む
- 使うのをやめようとすると、強い不安やイライラが出る
- 課金や買い物などで生活に支障が出ている
- うつ病の症状が以前より強くなっている
- 自分だけでは使用を調整できず、強く困っている
死にたい気持ち、自分を傷つけたい気持ち、食事や水分をほとんど取れない状態、ほとんど眠れない状態などがある場合は、次の診察日を待たずに医療機関へ連絡してください。差し迫った危険がある場合は、救急要請も検討する必要があります。
一日の過ごし方を具体的に伝える
診察や相談の際は、スマホの使用時間だけでなく、一日の生活全体を伝えることが大切です。
- 起床時間と就寝時間
- 夜中に目が覚める回数
- よく使用しているアプリ
- スマホを使う前後の気分
- 食事や服薬の状況
- 外出や入浴ができているか
口頭で説明することが難しい場合は、紙やスマホのメモに書いて見せても構いません。
うつ病とスマホの使用についてよくある質問
うつ病の療養中にスマホを見ること自体はよくないですか?
スマホを見ること自体が悪いわけではありません。家族との連絡、音楽、動画、医療情報の確認などに役立つこともあります。
睡眠、食事、通院などに支障が出ていないか、使用後に気分が悪化していないかを確認しながら使うことが大切です。
スマホを置くと不安になる場合はどうすればいいですか?
急に長時間手放そうとせず、5分程度の短い時間から始めてみましょう。
必要な連絡を受けられる状態にしておく、音楽やラジオを代わりに使うなど、不安を減らす工夫も役立ちます。
強い不安やイライラが続く場合は、自分だけで解決しようとせず、主治医やカウンセラーなどに相談してください。
「スマホ依存」は病気ですか?
「スマホ依存」は日常的に使われる言葉ですが、スマートフォンの使用全般を対象とした一つの正式な診断名として確立しているわけではありません。
ただし、スマホの使用を自分で調整できず、睡眠、食事、仕事、金銭、人間関係などに深刻な支障が出ている場合は、専門家への相談が必要です。
就労継続支援を利用したい場合はどこに相談すればいいですか?
お住まいの市区町村の障害福祉窓口、相談支援事業所、主治医、医療機関の相談員などに相談できます。
利用条件や手続きは、希望するサービスや本人の状態、自治体によって異なります。「日中に活動する場所がほしい」「将来的に働く準備をしたい」など、自分の希望を具体的に伝えましょう。
まとめ|スマホを責めるのではなく生活への影響を確認しよう
うつ病の療養中にスマホを長時間見てしまう背景には、意欲や集中力の低下、つらい考えから気をそらしたい気持ち、睡眠リズム、習慣など、さまざまな要因が考えられます。
スマホを使っていることだけを理由に、自分を責める必要はありません。一方で、睡眠、食事、服薬、通院などに支障が出ている場合は、使用方法を見直す必要があります。
通知を一つ減らす、寝床から少し離して置く、5分だけ画面を見ない時間を作るなど、負担の少ない方法から試してみましょう。
症状が悪化している場合や、自分だけでは調整が難しい場合は、主治医や支援者に相談することが大切です。就労や日中活動を希望している方は、体調や目的に応じて、障害福祉の相談窓口などに利用できる支援を確認してください。
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