「働きたい気持ちはあるのに、どの働き方を選べばいいのかわからない」と悩んでいませんか。
精神疾患がある方の働き方には、一般就労、障害者雇用、就労継続支援A型・B型など、いくつかの選択肢があります。それぞれ雇用契約の有無、給与や工賃の目安、受けられる配慮の内容が異なります。
本記事では、精神疾患がある方の働き方を、一般就労(クローズ・オープン)、障害者雇用、就労継続支援A型、就労継続支援B型の5種類に分けて解説します。今の体調や生活状況に合う働き方を考える参考にしてください。
精神疾患がある方の働き方は何種類ある?大きく3つに整理
精神疾患がある方が仕事を探す際の選択肢は、大きく分けると「一般就労」「障害者雇用」「福祉的就労」の3つです。さらに一般就労はクローズ就労とオープン就労に分けられ、福祉的就労には就労継続支援A型・B型があります。
それぞれ雇用契約の有無、給与水準、受けられる配慮の大きさが異なります。まずは全体像を把握しておきましょう。
一般就労(クローズ・オープン)
一般就労とは、一般の求人に応募して企業に就職する働き方です。障害や病気のことを職場に伝えずに働く「クローズ就労」と、伝えたうえで働く「オープン就労」があります。
クローズ就労は応募できる求人の幅が広い反面、職場に配慮を相談しにくい場合があります。一方、オープン就労は必要な配慮を伝えやすくなりますが、企業側の理解や求人内容によって選択肢が限られることもあります。
どちらも企業と雇用契約を結ぶため、原則として最低賃金以上の給与が支払われます。
障害者雇用
障害者雇用とは、障害者手帳を持つ方を対象にした雇用枠です。精神障害者保健福祉手帳を持つ方も対象に含まれます。
企業は法律により、一定割合の障害者を雇用する義務があります。障害者雇用では、障害の特性に合わせて業務内容や勤務時間などを相談しながら働ける場合があります。
雇用契約を結ぶため給与は原則として最低賃金以上となりますが、勤務時間や業務内容によって収入には差があります。
福祉的就労(就労継続支援A型・B型)
福祉的就労とは、障害福祉サービスを利用しながら働く形です。代表的なものに、就労継続支援A型と就労継続支援B型があります。
A型は、一般企業での就労が難しいものの、雇用契約に基づいて働ける方に対して、就労の機会や生産活動の機会を提供するサービスです。B型は、雇用契約に基づく就労が難しい方に対して、就労の機会や生産活動の機会を提供するサービスです。
A型は雇用契約を結ぶため賃金が支払われ、B型は雇用契約を結ばず、作業に応じて工賃が支払われます。利用には、市区町村の支給決定や障害福祉サービス受給者証が必要です。
働き方の種類を一覧で比較|稼働時間・給与・配慮の目安
5つの働き方を「週の稼働時間の目安」「給与・工賃の目安」「配慮の受けやすさ」で比較すると、自分に合う選択肢を考えやすくなります。
| 働き方 | 週の稼働時間の目安 | 給与・工賃の目安(月額) | 配慮の受けやすさ |
|---|---|---|---|
| 一般就労(クローズ) | 週40時間程度 | 20万円前後 | 小さい傾向 |
| 一般就労(オープン) | 週20〜40時間程度 | 15〜25万円程度 | 相談しやすい場合がある |
| 障害者雇用 | 週20〜30時間程度 | 10〜18万円程度 | 大きい傾向 |
| 就労継続支援A型 | 週20〜30時間程度 | 8〜9万円程度 | 大きい傾向 |
| 就労継続支援B型 | 週10〜20時間程度 | 2万円前後 | 大きい傾向 |
※給与・工賃はあくまで目安であり、地域、勤務時間、事業所、本人の状況によって異なります。就労継続支援A型・B型の平均賃金・工賃は、厚生労働省の令和5年度実績を参考にしています。
体調が不安定な時期は、稼働時間が短く支援を受けやすい選択肢から検討し、状態に合わせて段階的に働き方を考えることが大切です。
一般就労(クローズ就労)の特徴とメリット・デメリット
クローズ就労は、精神疾患があることを職場に伝えずに一般枠で働く方法です。応募できる求人の幅が広い反面、職場に配慮を相談しにくい面があります。
病名や障害を開示せずに一般枠で働く
クローズ就労では、採用選考の段階で職場に病名や障害の情報を伝えずに働きます。応募時にすべての病歴を自ら申告するとは限りませんが、業務に影響する配慮が必要な場合は、主治医や支援機関に相談しながら開示の必要性を考えることが大切です。
体調が安定しており、配慮がなくても働ける見通しがある方にとっては、選択肢の一つになります。
応募できる求人の幅が広い
クローズ就労のメリットは、一般の求人にそのまま応募できる点です。障害者雇用や福祉的就労と比べると、求人の数や職種の幅が広い傾向があります。
給与も一般の雇用条件が適用されるため、勤務時間や職種によっては、障害者雇用や福祉的就労より収入が高くなる場合があります。
配慮を相談しにくく体調悪化につながる場合がある
クローズ就労のデメリットは、職場に障害や病気のことを伝えていないため、障害特性に基づく配慮を相談しにくい点です。
合理的配慮とは、障害のある方が働くうえで支障となることについて、事業主と本人が話し合いながら、過重な負担にならない範囲で行う調整のことです。
配慮を受けにくい環境で無理を続けると、症状の悪化につながる場合があります。クローズ就労を選ぶ場合は、体調管理の方法や相談先を事前に整えておくことが大切です。
一般就労(オープン就労)の特徴とメリット・デメリット
オープン就労は、精神疾患があることを職場に開示したうえで一般枠に応募する働き方です。配慮を相談しながら働きたい方にとって、選択肢の一つになります。
病名や障害を開示したうえで一般枠に応募する
オープン就労では、応募の段階や入社前に、職場へ精神疾患や必要な配慮について伝えます。
開示する内容は病名だけではありません。「どのような場面で負担が大きいか」「どんな配慮があると働きやすいか」を具体的に伝えることが大切です。
障害者手帳がない方でも、一般枠で病気や配慮事項を伝えて働くことは選択肢になります。
職場に配慮を相談しやすい
オープン就労のメリットは、職場に配慮を相談しやすい点です。
たとえば、通院のための時間調整、業務量の相談、休憩の取り方、指示の出し方などについて、事前に話し合える場合があります。
体調の波に合わせて職場と連携できると、無理をしすぎる状況を避けやすくなります。ただし、どのような配慮が受けられるかは、本人の状況や職場の体制によって異なります。
応募できる求人が限られる場合がある
オープン就労のデメリットは、病気や障害のことを開示することで、応募先や業務内容が限られる場合があることです。
障害者雇用のように専用枠で応募するわけではないため、企業によって受け入れ体制には差があります。就労支援機関などを活用しながら、理解のある職場を探すことも検討しましょう。
障害者雇用の特徴とメリット・デメリット
障害者雇用は、障害者手帳を持つ方を対象とした雇用枠です。精神障害者保健福祉手帳を持つ方も活用できます。
障害者手帳を持つ方が対象となる雇用枠
障害者雇用は、企業が障害者雇用促進法に基づいて設けている雇用枠です。精神疾患がある方の場合、精神障害者保健福祉手帳を持っていることが応募条件になるのが一般的です。
応募の際は障害者専用求人に応募し、選考過程で必要な配慮や働き方について話し合うことがあります。
職場環境の調整を相談しながら働ける
障害者雇用のメリットは、障害の特性に応じた配慮を相談しやすい点です。
具体的には、短時間勤務からの開始、業務内容の調整、通院時間の確保、休憩の取り方などが考えられます。就労支援機関と連携し、職場と本人の間に支援者が入る場合もあります。
ただし、配慮の内容は本人と事業主が話し合い、過重な負担にならない範囲で検討されます。
一般就労と比べて給与水準が低くなる場合がある
障害者雇用では、一般就労と比べて勤務時間が短い求人や、業務範囲が限定される求人もあります。そのため、給与水準が一般就労より低くなる場合があります。
厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査では、精神障害者の1か月の平均賃金は14万9,000円とされています。ただし、勤務時間や職種、地域によって収入は異なります。
収入だけでなく、体調の安定や働き続けやすさも含めて検討することが大切です。
就労継続支援A型の特徴とメリット・デメリット
就労継続支援A型は、事業所と雇用契約を結び、支援を受けながら働く障害福祉サービスです。一般企業で働くことが難しいものの、雇用契約に基づいて働ける方が対象になります。
雇用契約を結び賃金が支払われる
A型の大きな特徴は、事業所と雇用契約を結ぶ点です。そのため、原則として最低賃金が適用されます。
厚生労働省の令和5年度実績では、就労継続支援A型事業所の平均賃金月額は86,752円です。ただし、勤務日数や勤務時間、事業所の作業内容によって実際の収入は異なります。
条件を満たす場合は、社会保険の加入対象になることもあります。
支援を受けながら作業経験を積める
A型では、軽作業、PC入力、清掃、カフェ運営、農作業など、事業所ごとにさまざまな作業が行われています。
支援員のサポートを受けながら働くため、いきなり一般就労に進むことに不安がある方にとって、就労経験を積む場になる場合があります。
生活リズムや作業習慣を整えながら、将来的に障害者雇用や一般就労を目指す方もいます。
利用には条件があり事業所によって内容が異なる
A型は、誰でも利用できるサービスではありません。一般企業での就労が難しく、雇用契約に基づく就労が可能であると判断された方が対象です。
また、利用には市区町村の支給決定や障害福祉サービス受給者証が必要です。事業所ごとに作業内容や支援体制も異なるため、見学や体験を通じて確認しましょう。
就労継続支援B型の特徴とメリット・デメリット
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに、就労の機会や生産活動の機会を得られる障害福祉サービスです。雇用契約に基づく就労が難しい方が対象になります。
雇用契約なしで作業に取り組む
B型は雇用契約を結ばないため、賃金ではなく工賃が支払われます。体調や生活状況に合わせて通所日数や作業時間を相談できる場合があります。
ただし、通所日数や利用の仕方は、本人の状況、自治体の支給決定、事業所の受け入れ体制によって異なります。
利用には、市区町村から障害福祉サービス受給者証の交付を受ける必要があります。
生活リズムを整えながら社会参加につなげられる
B型のメリットは、雇用契約による就労が難しい方でも、作業や通所を通じて社会とのつながりを持てる点です。
長期の休職やひきこもりを経た後に、いきなりフルタイムで働くことは負担が大きい場合があります。B型では、決まった時間に外出する、作業に参加する、人と関わるといった経験を少しずつ積み重ねられることがあります。
生活リズムの安定や次の働き方を考える土台として活用される場合もあります。
工賃は低めで経済的自立には課題が残る
B型の注意点は、工賃が低めであることです。厚生労働省の令和5年度実績では、就労継続支援B型事業所の平均工賃月額は22,649円です。
生活費のすべてをB型の工賃だけでまかなうことは難しい場合が多く、障害年金、家族のサポート、その他の制度と組み合わせて生活を考える方もいます。
将来的に収入を増やしたい場合は、体調や希望に応じて、A型、障害者雇用、一般就労などを視野に入れていくことも選択肢になります。
自分に合う働き方の種類を見つける判断基準
働き方を選ぶ際は、「体調」「手帳の有無」「収入の目標」の3つの軸で考えると整理しやすくなります。
現在の体調と週に出られる日数で考える
まず確認したいのは、今の体調で週に何日、何時間ほど外出や作業ができるかという点です。
- 週1〜2日、数時間程度から始めたい場合:就労継続支援B型が選択肢になることがあります。
- 週3〜4日、半日程度なら動ける場合:就労継続支援A型や短時間の障害者雇用が選択肢になることがあります。
- 週5日、フルタイムに近い形で働ける場合:障害者雇用や一般就労を検討できる場合があります。
これはあくまで目安です。無理に高い目標を設定せず、主治医や支援機関と相談しながら判断しましょう。
障害者手帳の有無と開示意向で絞り込む
次に確認したいのは、精神障害者保健福祉手帳の有無と、職場に病気や障害を伝えたいかどうかです。
障害者雇用は、原則として障害者手帳を持つ方が対象になります。一方、一般就労のオープン就労やクローズ就労は、手帳の有無にかかわらず選択肢になる場合があります。
就労継続支援A型・B型は、障害者手帳がなくても、医師の診断書などにより対象となる場合があります。ただし、利用には市区町村の支給決定や障害福祉サービス受給者証が必要です。
| 手帳の有無 | 開示意向 | 検討しやすい働き方 |
|---|---|---|
| あり | 開示したい | 障害者雇用、オープン就労 |
| あり | 開示したくない | クローズ就労、A型・B型 |
| なし | 開示したい | オープン就労、条件に合えばA型・B型 |
| なし | 開示したくない | クローズ就労 |
実際に利用できるサービスは、本人の状況や自治体の判断によって異なります。気になる場合は、市区町村の障害福祉窓口や支援機関に確認しましょう。
目標とする収入水準と将来のキャリアを照らし合わせる
最後に、将来どのくらいの収入を目指したいかを考えましょう。
たとえば、一人暮らしを目指す場合、住む地域や生活費によって必要な収入は大きく変わります。B型やA型は、一般就労や障害者雇用と比べると収入が低めになりやすいため、長期的な計画が必要です。
一方で、最初から高い収入を目指して無理をすると、体調を崩す可能性があります。今の体調を優先しながら、段階的に働き方を考えることが大切です。
精神疾患のある方が働き方を段階的に考える流れ
精神疾患がある方の働き方は、一度決めたら終わりではありません。体調や生活状況の変化に合わせて、少しずつ働き方を見直すこともできます。
B型・A型から就労経験を積む
体調が不安定な時期は、就労継続支援B型やA型から始めることが選択肢になる場合があります。
B型では、生活リズムを整えながら作業に参加する経験を積めます。A型では、雇用契約のもとで働きながら、支援を受けて作業経験を重ねることができます。
どちらが合うかは、本人の体調、作業能力、希望する働き方、自治体の支給決定によって異なります。
障害者雇用で安定した働き方を目指す
A型やB型で生活リズムや作業習慣が整ってきた場合、障害者雇用への移行を検討する方もいます。
障害者雇用では、雇用契約のもとで配慮を相談しながら働ける場合があります。短時間勤務から始め、体調に合わせて勤務時間を調整していくケースもあります。
就労移行支援事業所やハローワークなどの支援を活用すると、求人探しや面接準備を進めやすくなります。
体調と実績に応じて一般就労を視野に入れる
障害者雇用や支援機関での就労経験を重ね、体調が安定してきた場合は、一般就労を視野に入れることもできます。
一般就労では、職種や勤務時間によって収入の幅が広がる場合があります。ただし、移行を急ぐ必要はありません。
体調、働き続けられる見通し、職場で必要な配慮を整理したうえで、主治医や支援者と相談しながら慎重に判断しましょう。
働き方を決める前に活用したい相談窓口と支援機関
働き方を一人で決めようとすると、情報の多さに迷ってしまうことがあります。相談窓口や支援機関を活用すると、自分の状況に合った選択肢を整理しやすくなります。
ハローワーク(障害者専門窓口)
ハローワークには、障害のある方の就職を支援する専門窓口があります。障害者雇用の求人紹介、応募書類の相談、面接対策などを受けられる場合があります。
障害者手帳がない段階でも相談できる場合があるため、まず働き方について話を聞いてもらいたい方にとって、利用しやすい窓口の一つです。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、一般就労や障害者雇用を目指す方向けに、就職に必要な訓練や就職活動のサポートを行う障害福祉サービスです。
ビジネスマナー、パソコンスキル、応募書類の作成、面接練習、企業実習などを行う事業所もあります。利用期間には原則として上限があるため、目的や利用期間を確認しながら検討しましょう。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、各都道府県に設置されている専門的な職業リハビリテーション機関です。
職業評価を通じて、自分の強みや向いている仕事の傾向を把握できる場合があります。また、職場適応を支援するジョブコーチ支援などを行うこともあります。
利用できる支援内容は地域や本人の状況によって異なるため、必要に応じて確認しましょう。
まとめ|精神疾患がある方の働き方を知り自分に合う選択肢を考えよう
精神疾患がある方の働き方には、一般就労(クローズ・オープン)、障害者雇用、就労継続支援A型、就労継続支援B型などの選択肢があります。それぞれ給与水準、配慮の受けやすさ、必要な体力、利用条件が異なります。
最初に選んだ働き方が、将来のすべてを決めるわけではありません。体調や生活状況に合わせて、B型、A型、障害者雇用、一般就労へと段階的に見直していくこともできます。
一人で判断するのが難しい場合は、ハローワーク、就労移行支援事業所、地域障害者職業センター、市区町村の障害福祉窓口などに相談しながら、自分に合う働き方を考えていきましょう。
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